大谷翔平の活躍に思う「スポーツ」に求められるガバナンスとインテグリティ【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#4】
競技人生が短い学生が“熟達の勝者”となるように
中でも大事なのは「ダブルゴール目標」によるコーチングであろう。もちろん、大学スポーツも競技スポーツである以上、第1のゴールとして勝つことを目指すのは当然であるが、第2のゴールとして、スコアボードで勝つことだけでなく、“熟達の勝者”も勝者であることが重要だ。
若者向けスポーツコーチ法PCA(Positive Coaching Alliance)メソッドを提唱してきた米スタンフォード大学のジム・トンプソンは、その著書『THE DOUBBLE GOAL COACH(ダブル・ゴール・コーチ)』(東洋館出版社)で「ELMツリー」(熟達の木・楡の木)、つまり、努力(Effort)、学習(Learn)、改善、そして失敗(Mistake)に適正に対処することで“熟達の勝者”になる途を示している。優劣関係に立たない、複数の価値観・選択肢があることを示し、指導し、個々人が納得して、自律的に「熟達の勝者」を目指すように指導することが学生スポーツでは大切だと指摘する。
大学スポーツで活躍した選手であっても、大学卒業後にもプロスポーツでも活躍できる選手はほんの一握りであり、大部分の選手は大学の卒業とともに学生スポーツから卒業する、その後の社会人人生のほうがはるかに長い。大学スポーツ関係者は、スポーツを通じて人生の教訓や穏やかな人格形成を促し、卒業後、新たな人生で“熟達の勝者”となるように、指導・育成することを目指すべきであろう。
ダブルゴール目標によるコーチングを持続的・安定的に実施するには、それを支えるガバナンス体制の整備も欠かせない。ガバナンス体制が確立した大学内で、コーチ・監督・部長など、選手を育成する側と、選手一人ひとりが、明確な目標(ダブルゴール目標)を理解・目指して、健全な精神を保ち、ブレることなく首尾一貫して目標に向かって進んでいく姿勢を持つことは、チームに力強いエネルギーを注入させ、チームの組織風土・文化を変容させ、イノベーションを起こすことにつながることも期待できる。
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