上場廃止の可能性とトリガーを握るステークホルダー
喫緊の課題で言えば、「上場廃止」が脳裏をかすめるが、これはどうなのか。
東京証券取引所は昨年2022年4月、プライム・スタンダード・グロースへと市場を再編。なかでもプライムはその目玉市場との位置づけで、三栄建築設計も2021年6月末の移行基準日時点で「流通株式比率35%」が不適合だったものの(同31.1%)、各種施策を講じて、プライム市場に滑り込んだ経緯がある。そこまでして、プライム市場にこだわっていながら、今回の反社会的勢力との交際疑惑で、まさに市場に泥を塗った格好と言える。
しかしながら、前出の桝井、荒井両弁護士はともに、今回の件で「即刻、上場廃止」はないものと見る。
「まず前例がないこと。そして、(暴力団関係者に渡ったとされる小切手の額面約189万円は)金額的にも小さく、反社会的勢力との関係も、今のところ、組織的なものではなく個人的な関係にとどまっています。確かに、2015年10月1日に名古屋証券取引所・旧セントレックス(現ネクスト)市場上場で、光ディスクの製造・販売のオプトロムが上場廃止になった前例はあります。ただ、こちらは会社が債務超過から脱するために行った第三者割当増資に関する開示で、割当先に反社勢力がいたことについて虚偽の報告を行うという、極めて悪質な行為でした」(桝井弁護士)
とはいえ、三栄建築設計の現経営陣が掲げる「遮断」が達成されないと、先行きが不透明なことに変わりはない。6月20日終値が1542円だった同社の株価は、「勧告」の適時開示で急転直下、翌21日には一時1292円の安値を付け、同月27日には終値で1350円まで下げた。その後は1437円(7月18日終値)まで持ち直しているが、6月20日の水準までは戻していない。
そんななか、トリガーを引くかもしれないステークホルダーは複数いる。第一には取引先の金融機関で、取引業者間での信用失墜、そして、何よりも本業の住宅販売の顧客から忌避されれば、事業が一気にシュリンクする可能性は否定できない。そうなると、創業元社長が大量に保有する株式の価値は、さらに大きく毀損されかねないのだ。