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ビッグモーター兼重宏行前社長「自損の謝罪会見」は本当に必要だったのか

ビッグモーター兼重宏行前社長の記者会見に唖然

では、今、世の大きな批判に晒されている中古車販売大手、ビッグモーターの一連の不祥事は、コーポレートガバナンスの視点から、どのように受け止めたら良いのだろうか。

同社の場合、少なくとも、7月26日付で社長を辞任するまでは、球団オーナーも、野球チーム監督の役回りも、すべて兼重宏行前社長が兼務してきた。そんなコーポレートガバナンス状況のなかで不正や不祥事案が相次ぎ、自らの会社を棄損してきたと言っていいだろう。

ゴルフボールで修理に出されたクルマを傷つけて工賃を余計に取る。公道からの自社店舗の眺めを良くするために街路樹を除草剤やのこぎりを用いて勝手に伐採する……。このようなことがビッグモーターが第三者に調査をさせた報告書で次々と明らかになっている。この調子であれば、さらに内部告発などで、違う不祥事が発覚していきそうな雰囲気ですらある。

そして、私たち国民が、特に唖然としたのは、兼重氏の記者会見での発言であろう。

「このたび、損害保険に対する保険金請求について、板金部門の不正な請求が明らかになった。信頼を頂いたお客さま、損害保険会社、取引先さま、ステークホルダーに多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げる。本当に申し訳ございませんでした」

「このような事態を招いてしまったことをトップに立つものとして重く受け止めており、慙愧に耐えません」と神妙な顔で頭を下げたものの、不可思議な発言が次々と飛び出したのである。

「報告書を見て、こんなことまでやるのかと愕然とした。車を傷つけるなどあり得ない。これは一線を越えている。ゴルフボールを靴下に入れて振り回して損傷範囲を広げて水増し請求する。本当に許せません。ゴルフボールで傷つける、ゴルフを愛する人に対する冒涜ですよ」

「今回、不正があったのは生産現場で分からないところでやっている。私も損害保険会社も、不正は知らなかった」

「調査報告書にあるように、組織的ということはないと思います。個々の工場長が指示してやったんじゃないかなと。組織的と思われても仕方ないが、決してそんなことはありません」

……これだけの数の不正が存在していて、経営トップである社長が全く知らなかったと強弁したのである。ビッグモーターは、かつて報告書が出る以前にも、写真週刊誌『FRIDAY』(2023年5月5日号)、および「フライデーデジタル」(同年4月29日)において、《追及スクープ! ”中古車販売業界の雄”ビッグモーターが「客のタイヤ」に穴を空けていた「衝撃動画」》と題する記事などで、工場ぐるみの組織的な工賃水増しや保険金の過剰請求疑惑を詳細に報じている。

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