ビッグモーター兼重宏行前社長「自損の謝罪会見」は本当に必要だったのか

コーポレートガバナンスをプロ野球に例えると……
小難しい話になりがちな「コーポレートガバナンス」をプロ野球を例に考えてみよう。
セ・リーグの東京ヤクルトスワローズには、選手やファンの他に、球団オーナー会社であるヤクルト本社、ヤクルト球団の経営陣が存在している。そんななかでコーポレートガバナンスの目的とは、野球チームがオーナー、選手、ファン、地域社会の利益を満たすように運営されることである。
球団が監督に、監督が選手に、相手の主軸を強烈なデッドボールで退場をさせろと命じ、相手選手が頭部へのデッドボールで負傷してしまえば、その試合には勝つかもしれない。しかし、ファンは失望し、世間の怒りを買ってしまえば、球団の存続自体が危うくなる。ゆえに、短期的な利益や自分たちばかりの狭い範囲での利潤を追求しないことが求められる。
優れたコーポ―レートガバナンスがなければ、企業は株主や他のステークホルダーに損害を与えかねない危険な、あるいは利己的な決定を下す可能性がある。野球であれば、損失を出したり、ファンを動揺させたり、財政難に陥ったりする可能性がある。だからこそ、優れたコーポレートガバナンスが重要なのである。
野球を例に出したが、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営陣は、チーム監督やコーチングスタッフのようなものだ。野球の監督が試合ごとに布陣や作戦を決めるように、どの製品を発売するか、どのように販売するかといった戦術的な決定を下す。
球団オーナーであるヤクルトは、企業経営でいう株主だろう。彼らは、チームが試合に勝ち、価値が上がることを期待して資金を投じる。彼らはチームの日常的な運営を管理することはないが、取締役会の構成員など、重要事項に関する投票権を持つ。
世の中に流れる経済的な事件を、ワイドショーのように単純な“善悪”で受け止めることも大事なときがあるのだが、コーポレートガバナンスの観点から眺めると、さまざまな示唆が得られるということだ。
ピックアップ
- 【オリエンタルランド秘史#6】高橋政知「高額接待」伝票を処理した加賀見俊夫…
狙われたニッポン放送との共通点 (#5から続く)オリエンタルランドと筆頭株主・京成電鉄の間で生じている「資本の捻じれ」がアクティビスト(物言…
- 第10回【磯山友幸×八田進二#2】トップ万能主義が「ガバナンス」を蝕む…
経済ジャーナリストの磯山友幸氏と八田進二・青山学院大学名誉教授による対談の後編のテーマは、日本企業のガバナンス強化の実効性と学校法人のガバナ…
- 【スタートアップ「ガバナンスの乱」】頓珍漢なベンチャーキャピタリスト#3…
(#2から続く)創業社長は、株主総会の時期が近くなるにつれ、取締役会における数的優位を確保するための布陣を着実に構築していった。本来、各取締…
- 【ビッグモーター×損保の核心#6】損保ジャパン「120億円」で躓いたガバナンス…
損保ジャパンの「車両紹介」再開 (#5から続く)ところが、これまでビッグモーターの局部的にとどまらない不正を認識していたはずの損害保険ジャパ…
- 【女性社外取締役】日本総研・翁理事長《後編》「昭和のおじさん文化」との決別…
不祥事発生、そのとき、社外取締役は…… (前編から続く)――弁護士、公認会計士といった「士業」の女性たちにもオファーが集中しているようです。…
- 第9回【冨山和彦×八田進二#3】”お飾り社外取締役”を選ぶ日本企業の「ガバナンス粉飾」…
JAL再生「利権構造」を会社更生法で一掃 八田進二 (第9回#2から続く)冨山さんはJAL(日本航空)の再建にも関与されましたね。私は会社更…