検索
主なテーマ一覧

【2025年1月30日「適時開示ピックアップ」】フジHD、佐藤渡辺、JPX、アジャイルメディア、楽天グループ

1月30日木曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価は、前日から99円値上がりし、3万9513円で引けた。前日の終値を割り込んで始まったが、その後、半導体関連銘柄が買われて値を上げた。そんな30日の適時開示は、3月期決算の第3四半期の開示も始まったため、417件と多かった。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。

中居氏問題で広告主CM差し止め「フジHD」が業績下方修正

東証プライムのフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は、2025年3月期の業績予想を修正した。売上高は24年5月前回予想の5983億円から501億円減額して5482億円、当期純益も同290億円から98億円と66%も減少した。

元タレントの中居正広氏をめぐる問題で広告主がCMを見合わせているためで、フジHDはキャンセル分について、〈信頼関係を維持し、早期に広告の発注を再開していただくため、広告料金を請求しない方針〉を決めたという。

また、フジHDは同時に、今後、公認不正検査士で同協会理事の竹内朗弁護士が委員長を務める第三者委員会の調査が本格化するにあたり、①調査に協力した役職員に不利益な取り扱いをしない、②不利益な取り扱いは重大な不適切行為とする、③不利益な取り扱いを受けた役職員は直ちに第三者委もしくは会社に申告する――との取り決めも公表した。

【フジ・メディア・ホールディングス】通期業績予想の修正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250129557708.pdf
第三者委員会の調査における調査対象者保護について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250130557893.pdf

道路舗装「佐藤渡辺」談合の略式命令で報酬を自主返上

東証スタンダードで道路舗装工事の中堅企業、佐藤渡辺(東京・港区)は、福島県石川町の発注する工事に関し、談合罪で従業員が略式命令を受けたことを受け、鎌田修治社長が報酬を2~4月までの3カ月間30%分を自主返上すると発表した。

佐藤渡辺は2022年9月ごろ、石川町発注の複数の工事をめぐり、入札前に他社と受注調整していたとして、郡山区検察庁に略式起訴されていた。

談合はコンプライアンス(法令遵守)の一丁目一番地であり、とりわけ米国では重罪と見なされる違法行為。同社のコーポレートガバナンス体制の健全化が急務と言えよう。

佐藤渡辺】取締役報酬の自主返上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250130558152.pdf

「JPX」社員のインサイダー取引で調査検証員会が報告書提出

東証プライムの日本取引所グループ(JPX)は、傘下の東京証券取引所の社員によるインサイダー取引疑惑について、調査検証委員会の報告書を公表した。

この社員は21年春に入社。23年9月から上場部開示業務室の勤務となった。ここで、自分が株式公開買い付け(TOB)の担当となり、自ら管掌していたファンドや、他のチームのTOBに関するインサイダー情報を実の父親に伝えていた。

これについて調査検証委は〈当該親族がインサイダー取引を行ったという前代未聞の事案」と評した。また、インサイダー取引規制に違反する社員がいたことについて、〈JPXが現実問題として想定できていなかった〉ことが根本的な原因と指摘、情報管理の強化を求めた。

さらに、再発防止のための教育・研修制度については〈管理職や経営層が真剣に社員と向き合い、社員がこれらの理念に腹落ちしているかを確認しながら、真摯に、いわば制度に魂を入れて行う必要がある〉と訴えた。

当のJPXは役員の処分も発表し、山道裕己CEO(最高経営責任者)と、東証の岩永守幸社長を2カ月間、50%報酬を減額する。

日本取引所グループ】独立社外取締役による調査検証委員会の調査報告書の公表について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250129557469.pdf
金融庁による報告徴求命令に対する報告書の提出及び責任の所在の明確化について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250129557471.pdf

インターネット「アジャイルメディア」不適切会計の元経営幹部ら提訴の裁判が和解

東証グロース上場でインターネットサービスを提供するアジャイルメディア・ネットワーク(AMN、東京・港区)は、不適切な会計処理に関与した経営幹部らに損害賠償を求めた訴訟で1月30日、和解が成立したと発表した。

なお、和解金は約3000万円で、詳細な公表は差し控えるとしている。

これまでのリリースによると、提訴は23年10月。台湾の子会社の取引などに不適切な会計処理が発覚し、有価証券報告書を訂正。さらに金融庁からも6925万円の課徴金の納付命令を受け、納付した。これらの損害について、当時の社長と監査役ら8人に損害を賠償するよう求めていた。

和解金と金融庁の課徴金の金額の乖離はどうなっているのか。

【アジャイルメディア・ネットワーク】(開示事項の経過)訴訟の一部和解成立及びこれに伴う特別利益の計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250130558247.pdf

「楽天グループ」が“楽天証券HD”の上場方針を撤回

東証プライムの楽天グループは、上場する方針を示していた楽天証券ホールディングス(HD)について、同日開催された楽天証券HDの取締役会において、この方針を取り下げることを決定したと公表した。

楽天グループ各社と楽天証券HDの株主でもある、みずほフィナンシャルグループ(FG)との連携を深めることで事業価値を高めていく方針に転換したとしている。

【楽天グループ】楽天証券ホールディングス株式会社の東京証券取引所への上場方針変更に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250130558044.pdf

(平日連載、1月31日公表分に続く

ランキング記事

ピックアップ

  1. 【米国「フロードスター」列伝#8】世界企業「シスコ」を騙して“13万ドル不正転売男”の虚飾と末路…

    今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiner…

  2. 【2025年2月20日「適時開示ピックアップ」】ジェノバ、グンゼ、オウケイウェイヴ、MTG…

    2月20日木曜日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前日から486円値下がりし、3万8678円で引けた。為替相場で円高ドル安が進行し、売…

  3. ゲーム会社vs.アクティビスト「経営者の業績連動報酬」は企業価値創造のインセンティブとなるか【遠藤元…

    遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) ストラテジックキャピタルのガンホーに対する「公開アクティビスト活動」 スマートフォンゲーム「パズル…

  4. フジテレビ問題は対岸の火事ではない〜「人のふり見て我がふり直せ」は経営者の法的な義務である〜【野村彩…

    野村 彩:弁護士(和田倉門法律事務所)、公認不正検査士(CFE) 会社から“雇用”でなく“委任”されているのが取締役 文春砲に端を発したテレ…

  5. 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#14】豪エナジー・トランジション・ミネラルズ、P2Xソリューシ…

    豪資源開発会社、トランプ発言受けグリーンランドでの規制緩和に期待 オーストラリア資源開発会社エナジー・トランジション・ミネラルズ(ETM、旧…

  6. 【米国「フロードスター」列伝#7】ヘッジファンドトレーダー“損失補填”で嵌まったポンジスキーム…

    本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=AC…

あなたにおすすめ

【PR】内部通報サービスDQヘルプライン
【PR】日本公認不正検査士協会 ACFE
【PR】DQ反社チェックサービス