富士フイルム元CFOが徹底分析「不祥事企業60社」の真因 #2
近年の約60社における企業不正・不祥事を分類
#1では、企業不祥事発生の防止・抑止において、いかに「経営者資質」が重要かを指摘しましたが、近年の日本企業における不祥事60ケースを軸に、その内容と特徴を分析すると、7割近くが経営者資質に問題があることが判明しました。
まずは「納期優先・コストカットを主因とする品質等に係るデータの改竄、隠蔽、無資格検査等の放任」で、以下の3パータンで約30社に上りました。なお、社名が赤字のものは、不祥事を繰り返している企業です(以下同様)。
1-1: 品質関連の燃料データ等の改竄
- 三菱電機(2021年6月)
- 日野自動車(2022年3月)
- スズキ(2016年、2018年2回)
- 三菱自動車(2016年)
- 日産(2018年)
- マツダ(2018年)
- SUBARU(2018年)
- ヤマハ発動機(2018年)
- 日本ガイシ(2018年)
- 神戸製鋼所(2006年~複数回)
- 旭化成建材(2015年)
- 東洋ゴム(2015年)
- 宇部興産(現UBE、2018年)
- 東レ(2017年、2022年2回)
- KYB(通称カヤバ、2018年)
- 日立化成(2018年)
- 日立金属(現プロテリアル、2020年)
- クボタ(2018年)
- TATERU(現Robot Home 、2018年)
- IHI(2019年)
- トヨタ自動車販売(2021年)
- 日本製鋼所(2022年)
1-2: インサイダー取引、相場操縦
- 神戸製鋼所(2019年、社員2人によるインサイダー取引)
- 東洋ゴム(2016年、取引先役員がインサイダー取引)
- 旭化成建材(2017年、社員によるインサイダー取引)
- タカタ(2019年、社員9人によるインサイダー取引)
- SMBC日興証券(2022年、役員らによる相場操縦)
1-3: リコール隠し、特別採用品を一等品として出荷
- 三菱自動車(2000年、2004年2回)
- 三菱電機(2021年)
- 神戸製鋼所(2017年)
- 中山製鋼所(2018年)
一方、「売上高(短期利益)至上主義」に由来する不祥事もあり、こちらも約30社に上りますが、主だったものは以下の4種類となります。
2-1: 環境規制による大気汚染防止法違反
- 神戸製鋼所(1977年~25回、対策に270億円を投下)
- 三菱マテリアル(2005年)
2-2: 不正会計・所得隠し・巨大損失隠し
- 東芝(2015年)
- 東芝子会社(ウエスチングハウス=2015年、東芝ITサービス=2015年)
- オリンパス(2011年)
- 富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション、2017年)
- LIXIL(2019年)
- 神戸製鋼所(2013年~所得隠し)
- 大和ハウス工業(2020年)
- ジャパンディスプレイ(2019年)など
2-3: 国内外の独占禁止法や米国腐敗行為防止法(FCPA)、英国贈賄法(BA)違反など
*1社あたり損害賠償額が200億円超のものを抽出。
- 東芝
- ブリヂストン
- パナソニック
- オリンパス
- タカタ
- トヨタ自動車
- 矢崎総業
- 古川電工
2-4: 不当残業、パワーハラスメントなど
- 三菱電機
- トヨタ自動車
- 電通
- ヤマトホールディングス(HD)
- 大和ハウス工業
このほかにも、引っ越し代金の過大請求などを行ったヤマトHDや、売り上げの架空計上を行った日本システム技術。大規模システム障害を繰り返すみずほ銀行を傘下に持つみずほフィナンシャルグループ、不正融資のスルガ銀行、保険料二重徴収を行っていたかんぽ生命および持ち株会社の日本郵政グループといった金融機関の不祥事もあります。また、原発立地に絡む金品の還流が発覚した関西電力も不祥事を繰り返しています。レオパレスや大和ハウス工業の施工不良問題なども発生しました。
特に記憶に新しいのは、みずほ銀行のシステム障害です。辞任した藤原弘治頭取(当時)はランチを食べて帰って来てパソコンを見ていたら、自分の銀行がシステム障害を起こして大ニュースになっていると、事件発生から3時間半後になって初めて知ったとされています。各支店のATMでは大混乱が起きているのにトップがその情報を知らない。どのような危機管理態勢になっているのか、お粗末と言うしかありません。
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