【内部通報特集#4】公益通報制度の番人「消費者庁」は何をしているのか

通報者を守れない“寄り合い所帯”の消費者庁

ところで、公益通報者保護法を所管するのは、消費者庁だ。改正法は日本全国にある一定規模以上の全ての企業に適用され、体制整備義務を負う「事業者」には企業だけでなく官公庁や地方自治体、病院、学校まで含まれる。公益通報者を守る極めて重要な執行業務が加わり、本来であれば予算や人員が大幅に増加され、新たな執行体制が整備されてもよいはずだが、改正法施行から1年、消費者庁に目立った動きはない。

公益通報者保護法改正前から懸念されていたのは、消費者庁自体が特定の業界を所管する監督官庁ではないため、ただでさえ霞が関で“弱小官庁”“寄り合い所帯”とも揶揄される消費者庁が公益通報者保護法改正法施行後、大企業や官公庁などに対峙し、どこまで実効性を持って内部告発者を保護できるのかということだった。

法改正後、消費者庁に目立った動きはない
(写真は東京・霞ケ関の消費者庁)

この1年、消費者庁がどう動いたのかを知ることは、改正法の実効性を見るうえで最も重要な指標のひとつとなるだろう。ところが、消費者庁のホームページを見ても、「公益通報者保護制度」の項目は存在するものの、企業などに対して何らかの行政措置を行ったという事例は確認できない。この1年間、公益通報で企業の不正が明るみに出た事例がある一方で、改正法を所管する消費者庁はいったい何をしていたのか。

かつて消費者庁に所属していたこともある淑徳大学の日野勝吾教授(#3記事参照)は、こう説明する。

「まずは公益通報者保護制度の周知を徹底するということで、この法律を所管する消費者庁は、公益通報者保護法改正法施行に合わせて、動画で説明会を行ったり、『公益通報ハンドブック』というハンドブックを作成するなど、周知活動に積極的に取り組んでいます。加えて、消費者庁のホームページでは公益通報者保護法の逐条解説も公表している。通報をしようとする労働者等への周知を含め、引き続き幅広く周知いただきたいと思います。また、公益通報者保護法が改正される前より、公益通報者保護制度相談ダイヤルを設置しており、行政解釈や制度の説明を行うとともに、寄せられた声を、この制度の企画立案に活かせるよう努めていますので、ぜひ活用していただきたいと思います」

もちろん、法律の周知徹底は大前提だ。ただ、企業や通報者(これから通報しようとしている人も含む)がそれ以上に期待しているのは、消費者庁が改正法に基づき、どれだけ公益通報者保護に主体的に関与したかだろう。改正法には企業など事業者側に対して内部通報の体制整備義務を課している。大企業はもうほぼ設置済みとしても、社員300人超の中小企業はどうなのか、あるいは実際に体制整備をしたものの、運用状況はどうなっているかについて、消費者庁は当然、把握していなければならないはずだ。しかし、そのあたりの情報は何も公表されていない。