ドン・キホーテ社外取締役、立命館大学・西谷順平教授「不確実な時代に求められる社外役員の“別視点”」【新春インタビュー#11】

西谷順平:立命館大学経営学部教授・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス社外取締役

賢者が2025年のガバナンスのあり方を占う「Governance Q」新春インタビュー第11回は、経営学者の傍ら、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を傘下に持つパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の社外取締役である西谷順平・立命館大学経営学部教授。創業会長、安田隆夫氏の強烈なキャラクターに彩られるドン・キホーテでの社外取経験、そして、専門の「ゲーム理論」などの視点から見える、今年2025年のコーポレートガバナンスの行方とは――。

防衛調達審議会委員としても注目する「川重裏金問題」

まず簡単に私の研究者としての来歴をご説明しますと、もともと国際経済学が専門でしたが、大学院から会計学に転換しました。そこで、経済学をベースにゲーム理論などを使って数式でモデリングし、会計情報が絡んでいるようなシチュエーションでどういうことが起きるかを分析しています。

会計事象のメカニズムを数理モデルによって分析するため、「分析的会計研究」とも言われます。このような専門分野が関係しているのかは分かりませんが、「ドン・キホーテ」の親会社であるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)社外取締役(監査等委員)や、防衛省の外局である防衛装備庁の防衛調達審議会委員も兼務し、官民でガバナンスの一端に関わる職務に携わっています。

2024年のガバナンスをめぐる事象で特に印象深いのは、川崎重工業による架空取引問題(同社による海上自衛隊の潜水艦乗組員らへの金品提供問題。捻出された裏金は2018~23年度の6年間で約17億円とされる)です。私自身、防衛装備庁で委員を務めているので、責任を強く感じるところですが、昨年末に特別防衛監察の中間報告が公表され、自衛隊員に対してさまざまな便宜を図っていたことが明らかになりました。

いろいろな問題が指摘されていますが、根本的には国の調達設計が現場の感覚と合わないものだったため、企業側と現場の自衛隊員が現場レベルで帳尻合わせをしたのが発端だったのかもしれません。

企業と自衛隊のそれぞれにおいて、現場と上層部の乖離にガバナンス上の問題が出てしまい、結果として“裏金づくり”にまで発展してしまったのだと思います。詳細は最終報告まで待たなければなりませんが、架空取引は40年以上行われていたとされており、関係者の一人としてかなりショックを受けました。

私自身、下請け企業のコーポレートガバナンス問題をこれまでにも指摘してきましたが、何らかの形で防衛産業を担ってくださっている企業はかなりの数に上るため、なかなか動きが取りづらかった面もあったのでしょう。しかし、懸念していたことが起きてしまったという忸怩たる思いです。

昨今、日本の企業社会では社外取締役が本当に機能しているのかが問題視されています。公的セクターの審議会委員とはいえ、役職を任された以上、これまでよりも、さらに突っ込んだ発言をしていかないといけないと強く思いました。