徳島県・後藤田正純知事「ガバナンス改革の先にある“うずしお”の県政へ」【新春インタビュー#10後編】

ディズニーパレード開催で“まちづくり”の意義を再発見

とはいえ、「田舎や地方って楽しみが何もない」と思っている方が多いのも事実でしょう。そういう方たちに何か刺激を与えたいと思って1年がかりで実現したのが、昨年12月1日に開催した「徳島おどりフェスタ」というイベントです。

後藤田正純・徳島県知事

有名な“連”が阿波おどりを披露するほか、ミッキーマウスが登場するディズニーパレードも行いました。当初の見込みを大幅に上回って、県内外から8万人がいらっしゃいました。8万人ってこんなにいるんだ! というというほどの賑わいでした。コンテンツさえしっかりしていれば、地方都市でも集客する力があるということです。

一方、別の発見もありました。ディズニーパレードでは、今まで使っていなかったJR徳島駅の北側にある公道を封鎖して行ったのですが、「こっちの街並みも使えるんだ」といった“頭の体操”にもなったと思っています。

実はJR徳島駅には南口しかないんですよ。県庁所在地のターミナル駅で出口がひとつしかないのは、ウチだけじゃないか……。では、北側はどうなっているかと言うと、すぐに徳島城跡のある城山という山が迫っているのですが、その間をJRの車両基地が占有しているのです。

江戸時代を通じ阿波・蜂須賀藩の居城で、徳島県人・市民のアイディンティティとも言える徳島城側に北口をつくるべきだし、街の広がりから言っても、経済原則から言っても、南口しかないというのはおかしい。

ただ、まちづくりって県が単独で行う話ではなくて、基礎自治体である徳島市が主体となって県と連携しながら行うのが基本。しかし、30年もの間、公共ホールの整備計画で揉めているのです。その間に徳島市長の交代や計画の変更があり、最終的に県主体で建設することになりました。

ところが、その整備費が216億円というとんでもない額で、費用も含めて計画の見直しを訴えた私が県知事に就任した。新しいホール予定地は県の土地ですし、県議会も7割が新案に賛成している。

費用を見直したうえで、県主体で整備を行うことに決まったので、淡々と進めればいいだけの話ですが、反対される人が現れる状況が続いているのです。ホールの話は早く決着せて、早くJR徳島駅の北側開発に着手すべきというのが本音です。

ちょっと徳島のPRやローカルニュースになったかもしれませんね(苦笑)。ただ、前編でもお話しした通り、幹部以下、県庁職員の意識改革を果たしたうえで、県民のみなさんに目に見える形で改革を実感してもらう必要があります。これも、企業における改革と同様でしょう。

ガバナンスを正常化し、足許をきっちりと固めてから、企業も行政も新しいことに打って出ることができます。そして、県庁にとって新しいこととは、新たな人を巻き込んでいくことにほかならない。徳島と言えば、鳴門の渦潮です。渦潮のように、徳島を軸に多くの人を渦の中に巻き込んでいくのが、私の2025年の目標です。

ガバナー(知事)になって、今年5月で2年。任期のちょうど半分になりますが、後藤田流の徳島県ガバナンス改革にぜひともご注目ください。

(取材・構成=編集部)