丸木強・ストラテジックキャピタル代表「2025年もアクティビストの“職業倫理”を全うする」【新春インタビュー#6】
各界の“賢者”が自らのガバナンス論を語る本誌Governance Qの2025年新春連続インタビュー。第6回の今回は、「アクティビスト」(物言う株主)として知られるストラテジックキャピタル代表の丸木強氏。24年はその投資姿勢について、一部から批判も浴びたが、本人は「履き違えた非難」と意に介さず。そんな丸木氏が考える日本市場、上場企業、そしてコーポレートガバナンスとは――。
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不動産を抱え込む日本企業に迫る変革
2023年3月から東京証券取引所が「資本コストと株価を意識した経営」の実現に向けた対応を要請して、2年弱が経ちました。
東証が発表した通り、プライム市場上場企業できちんと対応しているのが20%を切る程度。プライムの中でも開示状況によって「企業群1、2、3」と分けていますが、「企業群2」が多いのが現状です。
要するに、開示して東証の要請に応えてはいるものの、中身が全然ダメで、投資家にも評価されていないプライムの上場企業が3分の2程度も存在するわけです。
「企業群3」、つまり何も対応してない上場企業も十数%存在していることも明らかになりました。プライム企業がこんな状況ですから、スタンダード市場上場の企業は話にならないというのが現状です。
何が言いたいかというと、日本の上場企業におけるコーポレートガバナンスの改善はまだまだこれから――ということです。
そうした中で24年、ファンドマネージャーである私が刮目したニュースは、独立系のシステム開発、富士ソフトの買収をめぐるシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズに象徴されるような「不動産資産売却」を求めた動きでした。
他の企業を見ても、西武ホールディングスが旧赤坂プリンス跡地「東京ガーデンテラス紀尾井町」を米ブラックストーンに売却したこと、サッポロホールディングスが「恵比寿ガーデンプレイス」をはじめとする不動産資産の活用案を外部に求め、三井不動産や三菱地所、米KKRが名乗りを上げたと言います。
片や、米投資ファンドのエリオット・マネジメントは三井不動産と東京ガスの株式を相次いで取得、これも両社が所有する不動産価値の具現化を狙った動きにほかなりません。
そもそも日本の上場企業には、賃貸用不動産を保有する会社がたくさんあります。昨今の相場で不動産を賃貸に回した場合、得られる利回りは都心で3~4%程度。株式会社が行っていれば株主の取り分は法人税を課された後ですから、本業か副業かにかかわらず、有利子負債を活用しても賃貸用不動産のROE(自己資本利益率)はせいぜい4~5%であり、どんなに頑張っても「優良企業」の最低の目安とされる8%などには届きようがありません。
しかし日本の企業はそういう不動産を持っていると経営は安泰だと思っているようで、そこに対して今、内外の投資家が着目して株式を買い、賃貸用不動産を保有していても企業価値は上がらないと主張し始めています。
このような動きは25年も引き続き出てくるはずですし、私たちも不動産を抱え込む上場企業に投資していますので、この潮流に強く期待しているところです。
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