ブリヂストン荒川詔四元社長「臆病な経営が2025年のガバナンスを拓く」【新春インタビュー#1】
創業者やグローバル企業の経営トップなど、“賢者”たちに2025年のガバナンス予測を聞く新春インタビュー企画。第1回は世界最大級のタイヤメーカー、ブリヂストンを社長として率いた荒川詔四氏。「経営者は小心者でなければならない」と語る荒川氏が考えるコーポレートガバナンスの神髄とは……。
*
経営者として大事なことは、臆病であるとか、小心者であることだと思っています。
私がブリヂストンに入社したのは1968(昭和43)年ですが、入社2年目にタイの工場建設現場に送り込まれて、いきなり課題解決を指示されました。これが私のビジネスパーソンとしての仕事の原点だと思っています。
業務知識も肩書も権限もないない中で、異国の地に放り出されて非常に苦労したわけですが、最終的に問題を解決できたのは、相手と真剣に向かい合って、自分の方が相手にどういう印象を与えるのか、日々反省しながら、手探りで現地のスタッフとコミュニケーションを取ったからでした。
自分の考え方を相手によく理解してもらって、相手も納得して、一緒にやってみたら、うまく解決できた。入社早々のそうした体験がリーダーのあるべき姿の源流になっています。
そうしたやり方は社長になっても変わりませんでした。
ポイントは、いろいろ細かいとこまで気を使って、ああでもない、こうでもないと考える。そして出口を見つける。仕事とは“相手”のあることですから、一番大事なのはその人とよくコミュニケーションをとって、まずは相手の納得、さらには共感を得て一緒にやることです。それには相手の考え方も引き出さなければいけませんし、相手の力を使わせてもらうということでもある。
考えてみますと、こちらが知識を高めて、それで相手を説得するというプッシュ型ではなく、どちらかというと、相手の能力とか、いろいろなアイデアを引き出す方がうまくいく。
自信満々、いや、むしろ自信など微塵もなく、いろいろと心配になりながら試行錯誤して、この方法で良いのか? と不安になる方が良い結果が生まれるもの。なぜなら、そういう時は大体、コミュニケーションが問題を解決してくれるからです。
ピックアップ
- ハローキティと企業・組織の心理的安全性【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#8】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) ハローキティにはなぜ口が描かれていないのか? 1いまや、女性はもちろん男性でも知らない人はいない「…
- 【2024年12月25日「適時開示ピックアップ」】人・夢・技術グループ、井関農機、若築建設、麻生グル…
12月25日水曜日の東京株式市場は反発した。日経平均株価は小幅に反発し、終値は前日比93円高の3万9130円だった。欧米の投資家がクリスマス…
- 証券取引等監視委員会・浜田康元委員「日本企業の実力を映し出すマーケット整備を」【新春インタビュー#2…
浜田康:公認会計士・証券取引等監視委員会元委員 「貯蓄から投資へ」の奔流の中、裁判官出身の金融庁職員、東証職員のインサイダー事件が相次いで発…
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#7】ゴーゴーカレー、カワン・ラマ・グループ(インドネシア)、ウ…
ゴーゴーカレー、インドネシアで現地流通大手と店舗網拡大 「金沢カレー」の火付け役となったカレーチェーン、ゴーゴーカレーグループ(石川・金沢市…
- 【米国「フロードスター」列伝#4】シティグループで25億円横領した“ジャマイカから来た元少年”…
今回は、本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiner…
- 【ベーカー&マッケンジー 井上朗弁護士が徹底解説】トランプ政権は日本企業のガバナンスにどう襲…
ベーカー&マッケンジー法律事務所・井上朗弁護士 ドナルド・トランプ次期米政権の政策の輪郭が、見え始めてきた。「アメリカ・ファースト」…