アクティビスト「丸木強」が振り返る“注目総会”問題の核心#2【株主総会2023】
フジテック、空港施設……その他の“問題株主総会”は?
――エレベーター大手のフジテックの株主総会で創業家出身の内山高一前会長による株主提案はすべて否決された一方、取締役9人の選任など、会社提案の議案はすべて可決されました。内山氏側はフジテック株の約10%を保有しており、「創業一族としてフジテックの経営を正常化させる」として、官僚出身者など8人の社外取締役選任を株主提案していました。なお、フジテックをめぐっては、今年2023年2月の臨時株主総会で社外取締役3人を解任し、大株主の香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」が推す社外取締役4人選任され、経営権がオアシス側に移行。3月には内山氏が会長職を解任され、今回の定時株主総会で岡田隆夫社長ら社内取締役3人も退任することが決まりました。
丸木:本当に凄いことが起きたと思います。我々からすれば、結果は羨ましいくらいです。ただ、オアシス側が、創業家の関連当事者間取引を暴くために私立探偵などを使って“情報戦”を展開した可能性もかねて指摘されています。現在のところ、我々は“そこまでは出来ないな”というのが偽らざる実感です。
我々は、日本に拠点を置いて活動し、アクティビストを自認しているからこそ、レピュテーション、日本における投資家をはじめとする市場関係者からの評価を非常に気にします。「法律違反をしているわけではないので、許される」という考え方もあります。しかし、「そんなことまでやるのか」と市場関係者に思われること自体、レピュテーション・リスクと言えるかもしれないと捉えています。我々にとっては、今後の研究課題です。
――最後に、株主提案をめぐる事案ではありませんが、コーポレートガバナンスの問題で注目されたケースとしては、国土交通省OBらによる人事介入問題のあった民間企業「空港施設」の株主総会が挙げられます。総会では経営側が提案した取締役候補9人のうち8人が再任された一方、日本航空(JAL)出身の現役社長である乗田俊明氏の再任案が否決される異例の事態となりました。後に関東財務局へ提出された臨時報告書によると、乗田氏への反対票の8割以上が大株主のJALとANAホールディングスによるものだったと判明しています。
丸木:一言で言って、「これが日本だ」という感じです。そもそも、乗田前社長は国交省OBの人事介入を退け、その問題を顕在化させた人物です。そのような人物を大株主であり、乗田氏の出身母体であるJALが解任したわけです。JALとANAの両大株主が、航空機の発着枠に権限を持つ国交省に忖度した「大人の事情」にしか見えません。我々のケースの日証金と同様で、まさに「ディス・イズ・ジャパン」です。
このように2023年の6月総会は、目立った出来事が増えたという意味で、少しだけながら、進歩したのかなという印象を持っています。日本の機関投資家でも、株主提案に少しずつ賛成するところも出てきました。日本の株式市場は、毎年、ゆっくりしたスピードではありますが、トータルでは進歩していると言えるのではないでしょうか。そういう光明を見出した6月でした。
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