フジテック#1「追放創業家」が選んだ“最悪の選択”【株主総会2023】

2022年6月、追い込まれた内山が選んだ「最悪の一手」

2022年5月、オアシスは「Protect Fujitec(プロテクト・フジテック)」なるキャンペーンサイトを立ち上げ、内山高一の私的流用疑惑を暴き立て、株主総会で内山の取締役再任に反対した。

公表された61ページに及ぶオアシスのプレゼンテーション資料には、内山家とフジテックとの間で行われる数々の関係当事者間取引が指摘された。探偵を使った詳細な調査を行い、資料には内山家の自宅を掃除するフジテックのユニフォームを着た人物の写真まで掲載された。オアシスは、内山家が社員を私的利用していると、キャンペーンサイトや大手メディアを使って拡散した。

「フジテックを守るために」に掲載された内山氏自宅の写真
(同プレゼンテーション資料より)


しかし、フジテック側は、そのほとんどは外形的な事実関係から問題を紡ぎ出したに過ぎない推論として、これらの疑惑を否定し、後に内山は、オアシスを名誉棄損などで提訴することになる。しかし、こうした情報はその私的利用の真贋を確認するまでもなく、内山家とフジテックの間に少なくとも高額の関連当事者間取引があることを示すものだった。

米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスの大手2社は、内山の再任に「反対推奨」を出した。これで海外株主の多くが内山に反対票を投じる可能性が高まった。

2022年6月23日、内山は運命の株主総会を迎える。株主たちは内山がフジテックの取締役に再任されるかどうか、事態の推移を、固唾を飲んで見守っていたことだろう。しかし、内山は総会当日の午前9時、突然、取締役候補を下りて自身の選任議案を撤回する。総会のわずか1時間前の出来事だった。

株主総会の直後に開かれた取締役会で、内山は“非取締役の会長”に就任する。こんな奇策で、経営の中枢にとどまった。

しかし、この一手が創業家の運命を決定づけた。信用を何より大切にしてきたはずの内山だが、皮肉にも、彼は二度と株主の信用を得ることができなくなった。内山をはじめフジテックの役員たちは、欧米投資家に骨の髄まで染みついている「コーポレートガバナンス」について、まったく理解していなかったのだ――。

(文中敬称略 以下#2に続く

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