【女性社外取締役】日本総研・翁理事長インタビュー「多様性こそ価値」の時代《前編》
「企業再生」の経験が社外取締役就任の“糧”に
――翁さんは各社からのオファーがひっきりなしと思いますが、どのような人材が女性社外取締役に求められるでしょう?
翁 私自身の経験で申しますと、不良債権処理が大変な時期に、政府と民間が一緒に活動した産業再生機構で産業再生委員(非常勤取締役)をさせていただいたことがすごく役立っています。機構が手掛けたダイエーやカネボウなどの再建現場に実際に入ったわけではないものの、地方の中小企業を含めて、企業がどうした理由で躓き、どうやって生き返っていくのかというプロセスを目の当たりにしたことは、大変役立っています。
私は金融出身ということもあって、財務リストラでバランスシート(BS、貸借対照表)が改善し、収益管理の徹底でPL(損益計算書)が改善していくということは机上では理解していました。しかし、実際の企業再生の現場を見たことで、経営は経営者と従業員のモチベーションで変わることを多少は理解できたと思います。その後、企業再生支援機構でも企業再生支援委員(社外取締役)として参画し、日本航空(JAL)の再建に関与しました。JALは稲盛和夫さん(京セラ創業者)が会長として入られてから、社員のみなさんも劇的に変わっていった。やはり、「経営は人」ということを強く感じましたね。
そのように企業経営の経験がある方、というのは社外取締役として期待されます。実際、大手上場企業でも執行役員以上のポストに就任される女性が増えてきています。例えば、金融界でも三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務の工藤禎子さん、大和証券グループ本社取締役兼執行役副社長の田代桂子さんなどなど、1985年の男女雇用機会均等法の施行前後に入社された幹部の方たちが増えています。こうした方々は、今後も自社でキャリアをさらに積まれると思いますが、長い目で見れば、貴重な女性社外取締役候補にもなられることでしょう。そうした女性を企業側もどんどん育成していくことが必要ですね。
(以下#2に続く)
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