外部調査委員会が明らかにした「驚くべき不正」
ビッグモーターの不正な保険金請求がいつ頃から始まったのかは、定かではありませんが、弁護士からなる特別調査委員会が整備工場部門従業員へのアンケート調査を行ったところ、不正な作業が行われた時期について「2020年以前」とする回答が最も多かったことから見て、相当以前から不正な保険金請求が行われていたことがうかがえます。
そして、2022年3月に損害保険協会傘下の防犯対策協議会から損保会社に対して、ビッグモーターの不正請求疑義が提起されたことがきっかけとなって、ビッグモーター主要取引損保会社である損害保険ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がビッグモーターに対して、過去事案の徹底調査と被害契約者への対応を求めるに至ったのです。
ビッグモーターは、当初指摘を受けた保険金不正請求事案の発生原因を、現場の経験不足や技術拙劣に帰して報告し、事態の早期収拾を図ろうとしました。しかし、損保3社は、社内調査の客観性・透明性が不十分であり網羅性にも欠けるとして、弁護士等の外部調査委員会による調査を強く求め、ビッグモーターはそれに抗しきれず、2023年1月30日、特別委員会を設置し、同年7月18日に調査報告書が公表されました(作成は6月26日付)。
この調査報告書は、従業員からのヒアリング、アンケート調査、アジャスター(車両・対物事故にかかわる自動車の損傷を調査する技術専門職)によるサンプル調査なども盛り込まれ、質の高いものと評価できます。結果的にビッグモーターの不正・不適切行為を自らが依頼した外部調査委が実証してしまったのですが、ビッグモーターの経営としては、「まさかここまでの内容になるとは……」というのが、正直なところではないでしょうか。
修理費の水増し請求の手口
ビッグモーター従業員の通報内容および特別調査委員会報告書によれば、請求する車両修理代金(=保険金)を様々な悪辣な手段で水増ししていますが、その手口は次のようなものです。
- 修理費の高いタワー牽引の偽装、不要なタワー牽引の実施
- 入庫時には存在しなかった損傷を新たに作出する(例:ヘッドライトのカバーを割る、ゴルフボールを靴下に入れて振り回して車体を叩く等)
- 実際には存在しないキズを存在するかのように誤認させる写真撮影
- やっていない修理をやったとして請求
- 不要な修理・塗装や部品交換
- リサイクル品を使いながら新品の部品で請求
- 高機能塗装をやったことにして請求
よくもこんなことを思いつき実行したものと呆れるばかりですが、技術アジャスター協会が行ったタワー牽引を含んだ修理案件の無作為サンプル調査では、現車確認まではしていないという前提はあるものの、2717件中1198件(44%)に不適切疑義があるとしています。また、最近の情報では、損保大手4社がビッグモーターからの保険金請求約5万3000件を自主調査したところ、3割超に当たる約1万7000件で不正の疑いがあることが判明しています。4社は計20万件超の請求を調べる方針ですから、不正件数はさらに大きく増えることが予想されます。