【フランス弁護士特別寄稿】フランスにおける雇用契約終了プロセス「7つの重大リスク」 ~手続き無効化を招く典型的な誤りと実務対応の要点~《Part 2》

第4の重大リスク:重大な非違行為への対応の遅れ

即時対応が企業を守る

対応の遅れは、雇用主の立場を著しく不利にする恐れがあり、以下の時間的制約に留意する必要があります。

  • 解雇理由となる事実は、予備的な解雇面談の通知日からさかのぼって2か月以内に判明したものでなければならない
  • 重大な不正行為があった場合には、事実の発見から数日以内に解雇手続きを開始する必要があり、対応の遅れは不正行為の重大性を損なう可能性がある
  • 調査が必要な場合には、迅速に開始することで、企業としての適切な対応、公正性の確保、ならびに被疑者に対する不当な「評判の毀損」を防ぐことが求められる

第5の重大リスク:合意解約を当然視する思い込み

「合意」は交渉のうえに成り立つものであり、強要は無効を招く

合意解約はあくまでも任意であり、当然に応じてもらえるものではありません。従って、提案にあたっては以下の点を事前に検討する必要があります。

  • 合意解約は双方の合意による契約であり、理由を示すことなく、従業員には拒否する自由がある。そのため、雇用主には交渉の準備が不可欠
  • 従業員にプレッシャーをかけた場合、合意が無効となる可能性がある

合意解約を提案する際のベストプラクティス

  • 選択肢のひとつとして提案し、「最後通告」と受け取られないようにする
  • 解雇や異動といった他の選択肢も検討、準備しておく
  • 契約終了の背景や理由について、納得感のある説明を行う
  • 金銭的条件(解決金など)は慎重に、初期の話し合いが進んだ段階で提示する
  • 先に進める前に、従業員が冷静に判断できるよう、一定の熟考期間を設ける

このレポートの見解は、2025年3月に同弁護士による英語ウェビナー(フランス・フランクリン法律事務所Franklin Société d'avocats主催)で議論された重要なポイントを反映したものです。

次回は本レポート最終編。第6と第7の重大リスクをお送りします

(Part 3に続く