第4の重大リスク:重大な非違行為への対応の遅れ
即時対応が企業を守る
対応の遅れは、雇用主の立場を著しく不利にする恐れがあり、以下の時間的制約に留意する必要があります。
- 解雇理由となる事実は、予備的な解雇面談の通知日からさかのぼって2か月以内に判明したものでなければならない
- 重大な不正行為があった場合には、事実の発見から数日以内に解雇手続きを開始する必要があり、対応の遅れは不正行為の重大性を損なう可能性がある
- 調査が必要な場合には、迅速に開始することで、企業としての適切な対応、公正性の確保、ならびに被疑者に対する不当な「評判の毀損」を防ぐことが求められる
第5の重大リスク:合意解約を当然視する思い込み
「合意」は交渉のうえに成り立つものであり、強要は無効を招く
合意解約はあくまでも任意であり、当然に応じてもらえるものではありません。従って、提案にあたっては以下の点を事前に検討する必要があります。
- 合意解約は双方の合意による契約であり、理由を示すことなく、従業員には拒否する自由がある。そのため、雇用主には交渉の準備が不可欠
- 従業員にプレッシャーをかけた場合、合意が無効となる可能性がある
合意解約を提案する際のベストプラクティス
- 選択肢のひとつとして提案し、「最後通告」と受け取られないようにする
- 解雇や異動といった他の選択肢も検討、準備しておく
- 契約終了の背景や理由について、納得感のある説明を行う
- 金銭的条件(解決金など)は慎重に、初期の話し合いが進んだ段階で提示する
- 先に進める前に、従業員が冷静に判断できるよう、一定の熟考期間を設ける
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このレポートの見解は、2025年3月に同弁護士による英語ウェビナー(フランス・フランクリン法律事務所Franklin Société d'avocats主催)で議論された重要なポイントを反映したものです。
次回は本レポート最終編。第6と第7の重大リスクをお送りします。
(Part 3に続く)