裁判所が不法行為と断じた社内の“あの手のウワサ話”
さて、このように、今や「ふてほど」(昨年のTBS系ドラマ『不適切にもほどがある!』が由来)となる行為はたくさんある。本稿ではNG行動をいくつかご紹介したい。
①美人に対して「美人だね」と褒める
容姿をケナすのはもちろんNGだが、褒めるのもNGである。容姿は業務とは関係がない。したがって、服装を含め、“見た目”に言及することにはリスクがある。
他方で、業務と関係のある身だしなみについて指摘すること自体は問題ない。営業担当者が服務規律違反となるような服装をしている場合に指導することは、むしろ上司としての責務であろう。
ただし、その際に「ボクはそのスカート、色っぽくて好きだけどねー」などと余計なことを言わなければ良いだけである。
②「あの2人、不倫してるらしいよ!」と噂する
特定の人物について、その人物の異性行為が不誠実であるというような噂を流すことは、それが真実であろうとなかろうと、その人の人格権を侵害する行為である。
上司が部下について「○○と××がアヤしい仲にある」という噂を流したという事案で、裁判所は、上司が「社内の関係者に原告の私生活ことに異性関係に言及してそれが乱脈であるかのようにその性向を非難する発言」をすることなどは、「働く女性としての原告の評価を低下させる行為」であり不法行為にあたると断罪した*1。
*1 福岡地判平4.4.16労判607号6頁
なお、このような言動は名誉毀損罪として刑法犯になる可能性もある。
③業務中にアダルトサイトを閲覧する
これはバレたらなかなか恥ずかしい場面であるが、性的なサイトを職場で閲覧することはセクハラに該当し得る。
なかには「誰にも迷惑をかけていないじゃないか! 私の楽しみで見ているだけだ!」と開き直る強いハートの御仁がいらっしゃるかもしれないが、セクハラには「環境型セクハラ」という類型があるのだ。
「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」が、これに該当する。
なかなか長い定義だが、上司がアダルトサイトを閲覧している状態が「不快な就業環境」であることは疑いの余地がないだろう。
なお、仮にハラスメントとならなくとも、業務時間中にアダルトサイトを閲覧することは業務の懈怠行為であり、懲戒処分の制裁の対象や債務不履行になる可能性も高い。
④従業員を「ちゃん」付けで呼ぶ
「心理的負荷による精神障害の認定基準について」*2という労災判定についての基準をご存知だろうか。
*2 基発0901第2号(令和5年9月1日)
従業員が精神障害に罹患したとき、その原因が業務によるのか、それとも仕事とは関係のない疾患なのかによって、労災として認定されるかどうかが分かれる。この基準は、厚生労働省として、「これこれ、こういう事実があったら、業務との関連性がありますよ」という指針として使われるものである。
この中に、「○○ちゃん等のセクシュアルハラスメントに当たる発言をされた」ことは「心理的な負荷がある」と、はっきり書かれている。ちゃん付けは厚労省も認める、堂々たる“セクハラ呼称”なのである。
また、呼び捨てもリスクがある。ファーストネームの呼び捨てだけでなく、苗字での呼び捨てにも注意したい。「野村さん!」と呼ぶより「野村!」と呼ぶ方が圧迫的であり、その他の行為と相まってパワハラになる可能性がある。