第8回【坂東眞理子×八田進二#2】坂東眞理子流「大学改革」の奥義
社会は大学教育に“もっと厳しい要求”をすべき
八田 現在、日本には4年制大学が810ありますよね。定員割れしている大学・学部も多く、ざっくばらんな話、私は半分以下の大学数でいいのではないかと考えています。
坂東 私は4年生大学の性格を変えるべきなんだろうと思っています。研究をする、エリートを養成する大学と、スキルを身に付ける、専門職能的な大学です。おそらく今後、中堅以下の小さな大学で経営が苦しくなるところがどんどん出てきて、そのなかで危機を乗り越えて再生する大学と、消滅していく大学に二極化するのではないかと予測しています。
ただ、本当に問題の根が深いのは、一見、経営的には問題がないように見える大規模な大学ではないでしょうか。ブランド力があるから、現状ではとりあえず受験者、入学者も集まっている。それだけに危機感が乏しいように見えます。しかし、そうしたマンモス大学でしっかり教育が行われているか、優秀な学生が日本の大学を素通りして海外の大学に行ってしまうという大きな流れにはもっと危機感を持つべきだと思います。
八田 どうしたら良いでしょう?
坂東 教育の成果に対し、社会がもっとチェックを入れる、もしくは厳しい要求を出すべきだと思います。
八田 確かに、日本の企業は大学で学んできたことを、まったくと言っていいほど、評価していませんよね。新卒で採用してイチから、その会社の色に染め上げることを良しとしている。素直で上司の命令に絶対服従する体育会系を好んで採るわけです。
坂東 少子化はますます進みます。これからの10年で大学は本当に変わる、変わらざるを得ないのです。
八田 アメリカでは、連邦政府機関を含めて教育の質を一元的に関する機関はありません。そこで、連邦政府や州政府が認定した、民間のアクレディテーション(評価)機関が高等教育の質の保証に関与していますが、日本は、形式的に、一律的な評価をする組織があるという程度ですよね。
坂東 おっしゃるとおりで、日本の場合はすごく形式的なんですね。それこそ、学生と教員の比率とか、教員1人当たりの校舎の面積とか……。教育した結果、どういう人材を生んでいるのかは評価していません。日本の大規模な大学が危機感を持てないのは、厳しい評価に晒されていないからではないでしょうか。
八田 昭和女子大学はいかがですか。
坂東 うちは小規模とは言えないものの、学生を集めるだけのブランド力はありませんから、強い危機感を持っています。お茶の水女子大学が工学部(共創工学部)を作りましたでしょう? 昭和女子大学も以前から作りたくて模索しているのですが、ネックになっているのが、東京23区内で大学定員数を増やしてはいけないという規制。世田谷キャンパス1カ所だけなので、現有定員の中で遣り繰りしなければならず、そうすると、他の学部の定員を減らす必要があります。
改革を実行に移すときは、既存のものを変えるよりも、全く新しいものを作ったほうが抵抗が少なく、上手くいきます。これまでは既存のものを変えずに来たので、上手くいったのですが、今度ばかりはそうも言っていられません。今、何とか知恵を絞っているところです。
八田 先生のバイタリティでもって、次世代を担う若者を送り出す機関としての大学作り、心から期待しています。ところで、今も徒歩で通勤をされているんですって?
坂東 そうですよ(笑)。大学の総長が運転手付きの車に乗っていたら、SDGsからしても、保護者から学納金をいただいている立場からもまずいんじゃないかって言ってるんです。
八田 恐れ入りました(笑)。今日は本当にありがとうございました。
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