1億円超も一般的な「第三者委員会」の設置コスト
さらに指摘しなければならないのは、第三者委員会にかかるコストの問題である。今回、NHK職員の不祥事は、何度も繰り返すように「30数万円の不正経理」と報じられている。では、この不正経理問題を第三者委員会に調査させることでかかるコストはいかほどのものなのか。
今回の第三者委員会では、メディア法、会社法等が専門の弁護士が座長に就き、コンサルティング会社所属の公認会計士と憲法学や情報法等が専門の大学院教授が委員に就任したと発表されている。
今回のNHKの不正経理についての評価ではなく、あくまでも一般論だが、第三者委員会が設置される際には法律事務所の弁護士やコンサルティング会社や会計事務所等の公認会計士などが指名され、彼らのスタッフなどが補助者として資料整理などを担当することになる。当然のことながら、そこには多額の費用が発生する。今回は「30数万円」の経理不正に対する調査だが、その検証を担う第三者委員会にかかるコストは、果たしてどれほどのものなのか。無論、30万円では済むはずはない。これまた一般論だが、大手企業の第三者委員会の調査となると、1億円を超える費用がかかることは往々にしてあり、今年のある電機メーカーの不正調査等では総額で3ケタ億円が費やされたとも言われている。
言うまでもなく、NHKは国民から徴収する受信料で成り立っている組織である。であればなおのこと、受信料を使って調査をするにあたり、「30数万円の不正経理を調査するための第三者委員会に、どの程度の額のコストがかかるのか」を、国民の前に明らかにする必要があるだろう。受信料を払っている国民の感覚として、許容できる金額なのかどうか、判断材料が必要と思われるからである。

その予算は1700億円(2016年時点)を見積もるが……
余談だが、NHKで放送されたドラマに「これは経費で落ちません!」(2019年放送)なるタイトルのものがあった。皮肉ではあるが、第三者委員会に諮るか否か以前に、まずNHK職員は心してこのドラマに学んだほうがいいのではないか。
今回の報道を通じて改めて思うことは、NHKにおけるガバナンス改革は、昨今、頓挫してしまっているのではないかとの懸念が払拭できないということである。
(NHK第三者委員会問題・了)
取材・構成=梶原麻衣子