「ファミリービジネス」に着目して設置された経産省の研究会
「企業価値向上」というと、すぐに経済産業省が研究会を立ち上げる光景が常時繰り返されている。今回は、そのひとつ「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」を取り上げたい。
内閣府が今年2月に公表した「中堅企業成長ビジョン」がその端緒となっている。
大胆に要約すると、従前、政策の狭間に置かれてきた中堅企業に、改めてスポットライトを当てて国の成長戦略のドライバーとしての役割を果すことを狙うというもの。
そして、中堅企業の成長を牽引している独立型中堅企業の過半はファミリービジネス(以下「同族経営」という表現も適宜使用する)であるため、それら企業にとって有用な「ファミリーガバナンス」、すなわち、同族経営の中堅企業が長所を生かしつつ、短所となるリスクに適切に対処しながら成長を目指すためのガバナンスを構築するための規範を策定することの重要性などが説かれている。
経産省の研究会は、内閣府の中堅企業成長ビジョンが示した上記ミッションを実現するために立ち上げられ、すでに3月31日、6月13日と2回の研究会が開催されている。
実効的な「ファミリーガバナンス規範」の策定を阻む3つの理由
経産省が、これまで理論的、実務的に十分な議論や検討がされてきてこなかったファミリービジネスに、一定のリソースを割いて実態を把握し、ガバナンスの観点から研究を行うため、研究会での検討を行うこと自体、歓迎すべきことはいうまでもない。
では、この研究会が、内閣府の中堅企業成長ビジョンが示した、同族経営ガバナンスのグランドデザインを描くことができるかというと、現在のやり方では難しいように筆者には思えてしまう。その理由は3つある。