会社法における「内部統制システム」とは
ところで、今回取り上げる内部統制(Internal control)も多義的な概念である。
金融商品取引法では、上場企業をはじめ有価証券報告書等の提出義務のある企業を対象として、「財務報告の正確性と信頼性」を確保するため、財務報告に係る内部統制を構築・評価し、その結果を内部統制報告書に記載して提出することを義務付けている(金商法24条の4の4第1項)。
ただし、今回は金商法の内部統制ではなく、会社の業務執行が適切に行われることを確保するための仕組みである「会社法における内部統制」に焦点を当てて話を進めたい。ちなみに、会社法では「内部統制システム」という文言が用いられている。
会社法における内部統制システムとは次のような概念をいう。
上場企業のように事業規模が相当程度に大きくなった株式会社では、わずかな人数の取締役が会社の事業全般について、隅々まで監視監督することは非現実的である。
そこで、そのような会社の取締役は、善管注意義務の一内容として、おのおのが担当する事業部門の役職員による不適法・不適切な業務執行が行われないようにし、仮に行われてしまった場合にはこれを早期に発見できる仕組みを備えることが求められる。全事業部門で仕組みが備えられれば、取締役は、自らが担当しない事業部門の監視監督は担当取締役に任せて、それを信頼することができる。
このような会社における業務の適正を確保するために必要な体制が「内部統制システム」と解されている。
要約すると、内部統制システムとは、会社が営む事業の規模や特性などに応じて会社の業務の適正を確保するために必要な仕組みということができる。では、会社法における内部統制システムの三層構造とは何を指しているのか。