JR東日本の新幹線網を支える「連結技術」での重大事故
JR東日本で、走行中の東北新幹線の連結が外れる事故が、昨年9月19日と今年3月6日と半年のうちに2回も発生した。事態を深刻に捉えた国土交通省は同事故を「重大インシデント」に認定して、3月7日、運輸安全委員会が原因調査を開始した。
2本の新幹線を「連結」する技術は、旧国鉄時代に開発され、東海道・山陽新幹線で自動分割・併合の試験が行われ、JR東日本では1992年に実際に連結した東北新幹線の運転が開始され、秋田新幹線で実現した。
山形・秋田と東京方面の所要時間が短縮され、乗り換え解消の効果も大きい。新幹線の連結は新幹線ネットワークの利便性を支える極めて重要なインフラ技術であり、連結運転の信頼性回復は現在の新幹線網にとって不可欠かつ、JR東日本の経営にとっても喫緊の課題である。
「連結外し」の粉飾決算と「監査における不正リスク対応基準」導入による対処
企業経営にとっても「連結」は重要なキーワードだ。
ただ、新幹線の連結外れのインシデントと異なり、連結経営を中核とする企業経営において、子会社等を連結決算の範囲から除く「連結外し」は、意図的な場合が多い。
連結決算において連結の範囲の恣意的な操作は、連結グループの財政状態や損益状況を歪め、市場(投資家)に誤った財務報告等をすることになるため、「連結外し」は原則として禁止されている。
しかし、企業にとって決算を実態以上によく見せかけたいというインセンティブが働くことがある。SPC(特別目的会社)を用いて「連結外し」による粉飾決算を行った企業は、かつて、米エンロンや、日本での旧ライブドア、東芝、日興コーディアルグループ(現SMBC日興証券)など少なくなかったが、「market abuse(市場阻害行為)」に及んだ各企業がどのような代償を払ったかは、すでに知られている通りだ。
他方、監査の有効性を高める処方箋として、「監査における不正リスク対応基準」(2014年3月公表)が16年10月1日以後実施の監査から適用されて以後、連結外しの粉飾事案は以前に比べ少なくなった。
不正リスク対応基準は、別紙2に「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」(不正の危険信号=Red flag)を以下のように例示している。
「企業の通常の取引過程から外れた重要な取引又はその他企業及び当該企業が属する産業を取り巻く環境に対する監査人の理解に照らして通例ではない重要な取引のうち、企業が関与する事業上の合理性が不明瞭な取引が存在する」(「2.留意すべき通例でない取引」)
監査法人がこうした状況を認識した場合、不正リスクが高い局面として監査モードを切り替え、経営陣による説明が虚偽でないことを慎重に監査・調査することが義務づけられている。そのため、「連結外し」が無条件で認められるような状況ではなくなった結果、連結外しの粉飾決算は減少しているのである。