管理職の「アクティブリスニング」研修という試み
金融庁の取り組みが現在、どの程度の成果をあげているのかは外部からは分からないが、先駆的なこの施策が今後も継続的に続けられることを期待したい。一方、企業・組織の内部通報の窓口を務めたり、あるいはその支援業務をしている弁護士として感じるのは、心理的安全性が確保されている企業そのものがまだまだ少ないということだ。
「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」と書かれた『経営計画書』を全社員に配布し、店長に壮絶な悪口雑言のラインを送りつけるといったパワハラと理不尽な降格人事を繰り返した大手中古車販売会社の副社長。
違法・不正の疑いがある知事の言動を記載した告発文書が公益通報の相談窓口に通報されたのに、調査を命じて通報者を特定して職員を解任して公の場で厳しく指弾するなど、公益通報者保護法違反の疑義ある幾つもの行為をしながら法的に問題がないと公言して憚らない県知事……。
企業・組織の心理的安全性の確保とは対極にある事例は確かにレアケースではある。しかし、ここまで極端ではなくても、その予備軍の状態にある企業・組織は少なからずあるはずだ。
このような事態に対する処方箋のひとつとして、企業の管理職研修メニューの「アクティブリスニング」が有用であることを確認しておきたい。
アクティブリスニングとは、「積極的傾聴」といわれるコミュニケーション技法のひとつだ。ただ、会話をする際に相手の話をただひたすら聞き続けるのではなく、相手の考えを背景まで含めて理解し、相手が伝えたい本質的な事柄や感情を汲み取ることが肝要となる。その結果、そんなアクティブリスニングは、従業員の考えや本音を引き出す際に効果を発揮することが期待できるというのだ。
もっとも、企業・組織では職位の上位者は部下に対する業務命令・人事評価等の権限等を背景に優越的な関係にある。部下は上位者に対し、フラットで対等な立場で発言することは現実的には極めて難しい。
このような条件を前提としても、経営トップや経営者と現場をつなぐミドル管理職は、企業価値向上のため、心理的安全性が確保された環境を企業風土として定着させる努力が求められる。
経営トップやミドル管理職も、クリスマスプレゼントとして、キティちゃんを購入した方がいるかもしれない。クリスマスバージョンのキティは、三角帽子をかぶり、サンタクロース風の衣装デザインのようだ。
クリスマスが前日に終わった12月26日の今日お伝えするのもなんだが、プレゼントをする前に、キティちゃんグッズを手に取って、ぜひともキティには口が描かれていないことを確認してほしい。そして2025年は、組織内に心理的安全性を確保すること、そのひとつの手法として「積極的傾聴」を実践されることを期待したい。
(隔週木曜日連載、#9は2025年1月9日公開予定)