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十二月大歌舞伎「あらしのよるに」と株主価値の最大化原則【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#7】

会社経営の目的を「株主利益最大化原則」とする会社法学

歌舞伎座から急に現実に引き戻してしまうが、会社法の論点でこの問題を見てみたい。

株式会社においては、利潤最大化をはじめとする「株主利益最大化」が、会社を取り巻く関係者の利害調整の原則であるとの見解が、米国だけでなく、日本でも通説的な見解と解されている。

かつて、日本では、株主のためではなく、従業員のために経営がなされるとの考え方(従業員主権論)が主流であったが、株主が会社の剰余権者の地位にあることに着目して次のように説明する理論的正当化が、論理的にも実践的にもすでに通説的な立場として浸透している。

すなわち、現代経済社会における株式会社の社会的な存在意義は、社会に新しい富をもたらすことである。それを効果的に実現するために、会社のさまざまなステークホルダー(株主、顧客、サプライヤー、従業員、コミュニティ・地域等)の中から、会社の経営を誰に委ねるべきかという問題を設定すると、会社が新たに生み出した利益は、まず債権者的立場のステークホルダーに弁済される。

続いて利益に剰余部分があれば、それが株主の取り分となるという構造にあるので(株主の「剰余権者」としての特有な地位)、その剰余を生み出すことにインセンティブがある株主に会社の経営を任せることが、会社の利益を最大化させるという説明である。

遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 歌舞伎版「…
2つの批判的な見解と「株主価値の最大化原則」の脆弱さ…
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