十二月大歌舞伎「あらしのよるに」と株主価値の最大化原則【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#7】

遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所)

歌舞伎版「あらしのよるに」を見て考えたこと

12月に入り今年も残すところあとわずか。先週、歌舞伎座の十二月大歌舞伎で『あらしのよるに』を鑑賞してきた。そのストーリーはおおよそ次のようなものだ。

嵐の夜、真っ暗な山小屋で、狼の“がぶ”と山羊の“めい”が偶然出会う。真っ暗で何も見えず風邪を引いて匂いも分からず、互いの正体を知らないまま、夜を通して語り合い、「あらしのよるに」という合言葉で再会を約束する。

嵐が過ぎ去った翌日、待ち合わせ場所で出会った2匹はお互いの姿を見て驚く。狼のがぶにとって山羊は大好物な食べ物。山羊のめいも狼が山羊を食べることを知っている。

「食うvs.食われる」の関係にあるはずの狼と山羊が嵐の夜をともに過ごしたことがきっかけとなり、同じ種の仲間の説得や妨害を苦悩しながら乗り越え、種族を超えた友情を深めていく。

舞台を見終えて感じたことは、一見、捕食-被食の関係にある狼と山羊とが、さまざまな障害を乗り越えて、共存共栄していこうとする、明るい未来を示唆する爽快感だ。

そしてその延長線として、二項対立による先鋭的なせめぎ合いや激しい葛藤が足枷となり、そこから先に進めない袋小路に陥っている社会科学の状況にも思いを馳せるきっかけを与えてくれた。

2つの要素を対立・相容れない要素としてではなく、互いに補完し合える多角的な見方と捉えることにより、閉塞的な現状を打破して、新たな方向性を志向する努力を続けることが重要である――そんなことも痛感した。