「見えないゴリラ」を見るためのリスクコントロール【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#6】
「見えないゴリラ」とは?
昨今、「見えないゴリラ」(インビジブルゴジラ)が国内外のさまざまなエリアやイシューで猛威を振るっている。
「見えないゴリラ」をご存じの読者も多いだろう。人間には「選択的認知」が働き、認知のプロセスにおいて自己の経験や背景などに基づいて情報を選択したり、自己の関心や期待などを反映させたりしてしまう。
この選択的認知を証明したのが「見えないゴリラ」の実験であり、米国の心理学者であるクリストファー・チャブリスとダニエル・シモンズの共著『錯覚の科学』(文藝春秋、2011年)が世に知らしめた。
「見えないゴリラ」の実験は、被験者を2つのグループに分けて、これからバスケットボールをパスする動画を見せるので、1つのグループの被験者には、白いTシャツのメンバー同士のパスを数えるように、もう1つのグループの被験者には、黒いTシャツ同士のバスを数えるように指示した。そして動画を見せた後、被験者に対して複数の質問に混ぜ合わせる形で、選手以外に目についたものがあったかを問うた。
実は、被験者に見てもらった映像にはゴリラの着ぐるみを着た人がパス回しをしている現場を通過するシーンがしっかりと映されている。この質問に対して、白いTシャツ同士のパスを数えた被験者の42%がその着ぐるみゴリラの存在に気付かなかったのに対し、黒いTシャツ同士のパスを数えた被験者の83%が「ゴリラを見た」と答えたという結果となった。
この実験により、人間の注意力というのは非常に選択的で、見ようと意識しているものはしっかりと目に入るが、見ようと意識していないものは目に入らない、すなわち、人は見ようとしているものしか見ないという自体が起きる(選択的認知)ことが明らかとなった。
それだけでなく、黒いTシャツ同士のパスを数えたグループが「ゴリラを見た」割合が高いという結果は、黒いゴリラの通過という予想外の出来事と、黒いTシャツ同士を注視するというタスクとの間に「黒い」という類似性があるために“認知”することができることも判明した。
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