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【大手企業訴訟ウォッチ#5】逆風「楽天グループ」と3つの民事裁判

楽天・三木谷会長兼社長の“名誉棄損訴訟”

もともと楽天という会社は、顧客を囲い込むことで成立するプラットフォームビジネスのなかでも、独自の「楽天エコシステム」を形成してきた。そして、そこにモバイル事業をくっ付けて、エコシステムを強化しようとしてきた。

ところが、そんな目論見とは裏腹に、モバイル事業は巨額赤字を計上し、グループの存亡を脅かす事態にまで発展している。今年だけでも、グループ社員への楽天モバイル契約獲得ノルマ、私募債の発行、銀行と証券の新規上場、そして最近ではカード事業会社を集約・再編のうえ、こちらも上場させる計画が持ち上がっている。いずれも逆風を象徴する中身で、ガバナンスの綻びを感じさせる。果たして、楽天グループをめぐる訴訟にも、そんな状況が影響しているのか。

先の2訴訟はまだ始まったばかりなので、現時点では目立った動きはないが、三木谷氏のコカイン使用を臭わせる報道について。『FLASH』は“関東の指定暴力団の元組員”と三木谷氏、音楽家のYOSHIKIの3ショット写真を証拠として掲げるが、三木谷氏側が「コカインの使用」や「元組員との密接交際」は事実無根と提訴するのに対し、光文社側は、「ITジャーナリスト」や「警察OB」への取材の結果と真実性を主張する。何だかセンセーショナルな誌面の割には、写真という“ブツ”ありきの面は否めない。だから、光文社の答弁書にある「追っての主張」も、何だか迫力に欠けそうな気配なのだ。

一方、盛んにメディアが取り上げた楽天モバイル元部長による水増し請求の訴訟はというと……。騙し取られたのは「100億円を下らない」と報じられていたが、今回の楽天モバイルの請求額は約140億円というから、それが楽天側が最終的に把握した実損なのだろう。ちなみに、8月25日の刑事裁判で、検察側は被告が騙し取ったのは「98億円」としている。

それにしても、容疑者は再逮捕を重ねて最終的には、元部長とその妻、大学の後輩、元同僚6名と2法人が訴訟の対象になっているが、元部長の逮捕直前の楽天モバイルでの役職は「基地局設置統括本部建設ソリューション事業室長兼物流管理部部長」という非常に長ったらしいもの。事件では元部長が、基地局設置工事を発注する側でありつつ、自ら受注の決裁も下す立場にあったことから、過大な水増し請求が可能だったことが指摘されていたが、この肩書ならむべなるかな、である。

三井住友銀行から始まり、トヨタ自動車、アマゾンジャパンを渡り歩いたという華麗なキャリアの元部長。楽天もそんな輝かしい経歴を買って、100億円もの詐取を許すような“要職”に据えたのであろう。当然ながら、楽天は被害者だが、チェック体制はどうなっていたのか。少なくとも、楽天グループでガバナンスが健全に機能していなかったことを浮き彫りにする、泣きっ面に蜂のような事件であることだけは確かだ。

#6に続く

ソフトバンクvs.楽天「産業スパイ”訴訟」遅々と進ま…
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