【大手企業訴訟ウォッチ#8】楽天、王子HD、大正製薬……最近の企業訴訟ピックアップ

丸紅グループvs.楽天グループの「巨額電気代訴訟」

・【原告】丸紅新電力【被告】楽天モバイル、外【内容】卸電力供給等電力料【現状】弁論

一言で言ってしまえば、「電気代の未払い」をめぐる係争。だが、それが総合商社、丸紅の小売電気事業会社と楽天グループの携帯電話事業会社との間ともなると、訴額は約76億円ととてつもなく大きい。

訴状によれば、楽天モバイルは2019年4月1日に、丸紅新電力と楽天との間で結ばれていた小売り電力で、丸紅新電力を代表契約者とする「卸供給取引と余剰購入取引」契約を継承。以後、21年3月31日まで、グループ内取引を行ってきた。しかし、その間の20年10月に丸紅新電力側で、電気代を過小請求をしていた「誤請求」が発覚。両社協議の上、丸紅新電力が楽天モバイルに差額を支払うよう求めていたのだが、21年3月22日に支払いを拒否され、結果、丸紅側が提訴に至ったという経緯だ。

電気料金の算定とその支払いの範囲については、裁判所の判断もしくは両社の合意による和解条件次第なので、その詳細は割愛する。だが、両社が協議をしていたであろう最中の21年1月26日、楽天モバイルは電力小売りサービスの「楽天でんき」の新規契約を当面停止すると発表している。理由は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の高騰と説明された。実際、この年の1月には、電力の仕入れ値が販売価格の5倍を越えるレベルにまで高騰していたからだ。

個人のブログによれば、楽天でんきの電源構成や調達方法は、ユーザーサポートに問い合わせても開示がなかったとの報告がある(19年11月時点)。確かに17年1月に楽天と丸紅新電力との包括連携がリリースされているが、実際の電力調達先に関する記述などはネット検索上では出てこない。そしてまた、この訴訟自体もアナウンスされていない。

ちなみに21年4月1日、楽天モバイルのエネルギー事業は、グループの楽天エナジーに承継されている。

“働き方改革”が絡んだ「有名企業vs.従業員」訴訟の行方

一方、大企業間訴訟ではなく、大企業と従業員(元従業員含む)の訴訟も散見された。

・【原告】K氏【被告】楽天銀行【内容】育児休業不利益【現状】第一回弁論

・【原告】N氏【被告】王子HD、外【内容】特急料金(通勤費)【現状】第一回弁論

楽天銀行と、製紙大手の王子ホールディングスという有名企業2社を相手にした、「育児休業」と「遠距離通勤」に関する2つの訴訟。「働き方改革」は、こうした訴訟を企業が抱えるリスクもはらんでいるが、裁判の中身を調べてみると、いずれもそれ以前から雇用関係で会社とトラブルになっていた案件と判明した。

企業と社員との間に軋轢が生じると、こうした新しい「働き方」をフックに、訴訟に至るという、このところの傾向を表す事象なのかもしれない。

・【原告】大正製薬【被告】U氏【内容】損害賠償【現状】弁論

この訴訟については、「デイリー新潮」が3月12日付の記事で概要に触れている(「大正製薬」が元幹部社員を訴えた前代未聞の裁判 訴訟記録から浮かび上がる「転職の意外なリスク」とは)。

被告は、ロート製薬に転職した大正製薬の元幹部社員。転職後にこの元幹部が監督をしていた、大正製薬社員が多く所属する草野球チームで、大正製薬を腐す発言をしていたことが、〈原告(大正製薬)の社会的評価を低下させるもの〉として、古巣から提訴された。

デイリー新潮の記事では、原告の代理人弁護士が「係争中のためコメントできない」とした一方、被告の代理人弁護士は「そもそも名誉毀損に当たるような話ではなく、なぜ訴訟を起こしたのかもよく分からない」とコメント。実際、訴訟の中身を調べてみても、「こんな内容で提訴?」と驚きを禁じ得ないものだった。

果たして、大正製薬の真意とは――。成り行きも含めて、継続してウォッチしたい。

大企業ではないが、次のような訴訟も……。

・【原告】多数【被告】メタモ、外【内容】損害賠償【現状】多数

・【原告】多数【被告】エクシア、外【内容】損害賠償【現状】多数

ともに投資話をめぐる訴訟だが、エクシアの裁判は、投資会社の「エクシア」が、不特定多数の人から投資資金を預かったものの、2022年3月頃から出金・返金に応じていないため、投資詐欺の疑惑が持たれている事案。すでに23年3月には、出資者259人が総額約32億円の損害賠償請求を集団訴訟で起こしているが、個別でもしばらく前から訴訟が乱発している。 メタモは仮想通貨を使った新しい資金調達のICO(イニシャル・コイン・オファリング)を謳いつつも、失敗したベンチャー企業。同社と同社創業者の佐藤由太氏を相手にした、損害賠償請求がこのところよく見られる。