【大手企業訴訟ウォッチ#7】日大「またしても不祥事」の中で抱える関連訴訟
目黒日大学園、龍角散、過去の因縁引きずる裁判
・【原告】学校法人日本大学【被告】田中英寿、外【内容】損害賠償【現状】第一回弁論
・【原告】Y氏【被告】東武鉄道【内容】労災隠し損害賠償【現状】第一回弁論
・【原告】女性2人【被告】龍角散【内容】損害賠償【現状】第一回弁論
・【原告】積水ハウス・リート投資法人、外【被告】東急建設【内容】各損害賠償控訴【現状】高裁・弁論
冒頭で日大を取り上げたのも、世間で再び日大が問題となっていると同時に、日大による田中元理事長に対する損害賠償請求がスタートしたということもあってのこと。
と同時に、この同じ日にはこんな訴訟も争われていた。
・【原告】学校法人目黒日本大学学園【被告】六本木地所【内容】請求異議【現状】弁論(本人・証人尋問)
原告の目黒日本大学学園は元々、女子校だった旧日出中学・高校で、2017年に日大と準付属契約を締結、2019年より日大とは別の法人が運営する準付属校となっている。そこで“乗っ取り事件”が起こったのが2020年8月のこと。学園の元理事長が「スペインの財団からの寄付話」「財務省保有のリクルート株購入話」などをエサに、“M資金”まがいの話に引っかかってしまい、持ち出された学校印で契約書に判を押され、学校の銀行預金に差し押さえがかかったのだ(M資金話については本連載#6参照)。
学園はその後対抗して、この事件で登場する複数の人物・法人を相手取って訴訟を起こしているが、その時のトラブルのうちの1つが上記の訴訟というわけだ。
ところで、この訴訟も田中元理事長時代の支配体制と無縁ではない。目黒日大学園にM資金まがいの話を持ち掛けたのがAという人物。この人物、複数の詐欺事件で民事・刑事事件の対象になっているが、日大応援部出身との触れ込みで、田中元理事長との距離の近さを謳い文句に、様々な話を持ちかけるというのが手口のひとつだったからだ。
日大アメフト部などの「競技スポーツ」(現在の担当は沢田副学長)は田中元理事長の権力基盤であり、その田中支配の残滓が、今になってあらゆる場所で複数の問題になって顕在化していると言える。言い換えれば、これらの問題が一掃されるまでは日大に新しい時代は来ないのではないかとさえ思われる。
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一方、「ゴホン! といえば」の龍角散の訴訟。原告の女性2人は、藤井隆太8代目社長の従姉妹に当たる人物だ(藤井姓とは異なる)。女性2人は藤井家の親族の死亡で龍角散株を相続したところ、会社側から買い取りの要求がなされ、条件面などをめぐって争っていた。ところが突如、一方的に会社側から申し立てを取り下げられたという。結果、従姉妹の女性からその間にかかった経費の諸々と、慰謝料を含めた約2250万円を賠償しろと申し立てられているというわけだ。
藤井社長によるセクハラ問題で元女性幹部と訴訟が勃発したことでも知られる龍角散(2021年に和解が成立)。同族企業におけるガバナンスの在り方が俎上に上ることは多いが、その根幹を為す「所有」をめぐっては火薬庫と言える。創業から時代が経つと親族も赤の他人のような存在となり、一族間でトラブルになりやすいためだ。本訴訟もそんな相続問題の一形態と言えるだろう。
日大にせよ、龍角散にせよ、過去の因縁が今なお燻り続けているケース。裁判とは企業・組織ガバナンスの間欠泉と言えようが、種々の“遺産”が今日にも影響を与えているのである。
(#8に続く)
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