日経弁護士ランキング首位、太田洋弁護士「アクティビストの“本性”を見せつけられた2024年」【新春インタビュー#12前編】
「株主」はすべからく一枚岩なのか
株主に眼を転じてみましょう。これまでは「株主」というビッグワードを単純に使って、株主は全員利害が一致している、一枚岩である(べき)という暗黙の前提がありました。けれども、そもそも個々の株主の利害は均一ではありません。
端的に言うと、短期的な利益を非常に重視する株主もいるし、中長期保有によってその企業の成長の果実を得ようという株主もいるわけです。むしろ、近年のNISA(少額投資非課税制度)の影響なども考慮すれば、多くの個人株主は基本的に中長期の保有を目指すものでしょう。その点、投資行動は機関投資家と比較的似ています。
そう考えると、ひと口にその企業の株主だと言っても、いろいろと利害が分かれていて、一部の株主にとっては非常に歓迎すべき施策だけれども、他の株主から見ると、その施策が大きく自分の利益を毀損するかもしれないという事態が起こり得る。
同時に、これまで「株主利益」は、株主の利益になることは他のステークホルダーの利益にも資するという文脈で語られてきました。実際、多くのアクティビストは、経営者は従業員や取引先といったステークホルダーの利益を隠れ蓑にして、株主利益を踏みにじっていると主張してきたのです。
そういう側面がないとは言いませんが、短期利益志向型の株主と、中長期保有の株主および、その他のステークホルダーとの間でまったく利害が反した、今回のダイドーリミテッドの事例は、個々の株主の間にも“利益相反”があるということを、極端な形ながら、改めて明らかにしました。
私は一貫してアクティビストについて、「良い」アクティビストと「悪い」アクティビストがいると言ってきましたし、アクティビストの主張がすべて“悪”だとも思っていません。ただ、アクティビストの言っていることが、これまた、すべて正義であるわけではない――。このことは2024年にわれわれが得た教訓と言えるのではないでしょうか。
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明日配信予定の後編では、太田弁護士が2025年の上場企業をめぐる動向、そしてガバナンスの在り様を予測する。今年は企業経営者にとって、どのような年になるのか――。
(取材・構成=編集部、後編につづく)
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