徳島県・後藤田正純知事「ガバナンス改革の先にある“うずしお”の県政へ」【新春インタビュー#10後編】
(前編から続く)後藤田正純・徳島県知事の新春インタビュー後編。2023年5月の就任以来、県政のガバナンス改革を進める後藤田知事だが、その射程は“次”に向けられていると語る。香港・ソウルへの直行便、徳島バッテリーバレイ構想、ディズニーパレードの誘致……新たな施策を次々と打ち出し、徳島名物「鳴門の渦潮」のように、多くの人を巻き込んでいくという後藤田知事の挑戦は、さながら“老舗大企業改革”の相似形に映る。
「海外直行便就航」と「徳島バッテリーバレイ構想」のインパクト
12月26日に韓国ソウル直行便も香港便と同じく週3便就航したことです。ともに、徳島阿波おどり空港発着で乗り継ぎなし。直行便の実現は「自分が生きている間はないと思っていたよ」という年配の県民の方がいらっしゃるくらいでした。
もっとも、海外との直行便のインパクトは、当然ながら、観光、インバウンドです。東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪など、東海道を軸とした、いわゆる「ゴールデンルート」に飽きて、“行ったことのない場所”に行きたいと感じている外国人観光客が増えているようです。
そういった中、徳島県三好市には「日本三大秘境」のひとつと言われる祖谷(いや)があります。その祖谷の「かずら橋」に至っては、いまや「世界三大秘境」とまで言われているほど。香港・ソウル直行便が就航したことで、外国人観光客が徳島県により興味を持ってくれるのではないかと期待しています。
ただ、直行便の意味は観光だけにとどまりません。例えば高校卒業後、県外に進学や就職していった若い人たちが、「徳島空港から海外に直接アクセスできるんだったら、徳島に戻ろうかな」と考えるきっかけとなる起爆剤になり得るのです。今後、さらにアクセスが向上すれば、Uターンだけでなく、移住者が今以上に増加するかもしれません。
折しも25年は4月13日から10月13日まで半年間、「大阪・関西万博」が開催され、県も徳島の自然や伝統を体感できるブースを出します。6月には徳島市で「第20回食育推進全国大会」が、7月には「第35回宇宙技術および科学の国際シンポジウム」(ISTS)も開かれます。
世界に向けて徳島県を発信する良いチャンスです。私は素直に「徳島、いよいよ来たな!」という気分です。
さらに昨年10月にはタイ政府の2機関と産業連携に関する覚書(MOU)も締結しました。農林水産物や工芸品を海外に発信するだけではなく、県内の中小企業が有する卓越した技術も輸出することで、徳島経済の国際化をより進めていきたいですね。
経済政策で言えば、今年の目標は昨年7月に策定した「徳島バッテリーバレイ構想」を前進させる年にすることです。バッテリー(蓄電池)市場は2050年には約100兆円規模に拡大する見通しです。
今、地方では高齢化や人口減少、労働人口の流出といった課題がより深刻化していますが、徳島もその例外でないどころか、人口は下から4番目という状況。そんな徳島ですが、県内には蓄電池や材料メーカーが数多くあり、その製造品出荷額は全国トップレベルです。
徳島バッテリーバレイ構想は30年までの7カ年計画で進めていきますが、そのためには、産官学一体となって産業構造の構築を目指すことが必須課題ですし、それに伴って雇用の創出、将来的には県民所得の向上も狙っています。
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