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徳島県・後藤田正純知事「長期政権で“大企業病”に侵されていた県庁改革」【新春インタビュー#10前編】

知事退職金は条例提案で不支給……自ら「透明性」を貫く理由

職員に厳しいことを求めている以上、私自身も知事の透明度を高めることを行っています。これは私がミッションで掲げた3つのうちのひとつです。そのひとつが退職金。知事就任後の23年11月、自ら条例を提案して不支給にしています(同年12月、県議会が可決)。また、任期も上限3期12年という条例を制定しました。

先ほどから申し上げている通り、知事は経営者と同じです。もちろんワンマンで長く経営に携わる経営者もいますが、知事には良くも悪くも権力がある以上、私は自分の任期は自分で決めることにしたのです。

実際、大叔父でもある後藤田正晴(元内閣官房長官)にも「権力は抑制的でなければいけない。同時に出処進退は、出る時はきちんと相談しなければいけないが、辞める時は自分で潔く辞めるものだ」と言われてきました。

トップに立つと、周囲は「辞めてください」とは言えないものなんです。だから、トップに就いた以上、自分で自分を追い込んでいかなければいけない。これは当たり前の話ですよね。

これは知事に限らず、県庁という存在自体も同じでした。県庁は「営業され慣れ」しているのです。県庁に来客があっても、自分の席で待ち構えて「今日は何の用ですか?」とマウントしてしまう。

そうしたマインドを打破するために、私は知事に就任して1年半、ほとんどすべてのお客さんを出迎えるようにしています。私にとっては当たり前のことですが、みんな、「知事が迎えに来た」とびっくりする。もしかしたら、「徳島、本気だな」と思ってもらえるきっかけになるかもしれない。

象徴的な例ですが、県にとって大変ありがたいことをしてくださった方々を表彰するのに、感謝状を渡すためにわざわざ県庁まで呼び出して、受賞者が壇上にいる知事に向けてお礼を言う――こんな旧態依然の風習が続いていたのです。

「呼び出さないで、こちらから足を運ぼう。感謝状を渡す立場が何で上なんだ!?」と。だから、私はこんな悪弊をやめさせました。

このような県庁の有り様は、“大企業病”と同じだったのかもしれません。知らず知らずのうちに、自分たちの常識が、社会や世間のそれと大きく違っている。常識的に考えておかしいはずなのに、20年もの間、「知事は偉い」「県庁は偉い」とみんなの頭が凝り固まっていた。

感謝する側は、心はもちろん、態度でも感謝を示すべきで、そこに上下はありません。本来、県庁、いや、政治は透明でフェアで公平・公正であるべきなのです。

企業トップや有名人、小学生や中学生、高校生といった子どもたちまでいろいろな人が知事室に来てくれますが、私は誰が来ても座って同じ目線でフラットな関係を築くことを重視しています。

こういった意識が県庁の職員にも浸透することを強く願っています。

(取材・構成=編集部、後編に続く