日本でも内部監査は「CEO」の登竜門となるか
海外で内部監査部門は、役職員が昇格するためには避けて通れない“王道”と言えるポジションと言います。よく引き合いに出されるのが、米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)で、ジャック・ウェルチ氏(1935~2020年、81~01年に同社CEO=最高経営責任者)ら、多くのCEOが内部監査部門の出身です。
一方、日本企業においては「内部監査部門の地位が低い」という声もあるのですが、昭和や平成のはじめの頃まではそういった時代もあったかもしれません。しかし最近は、そんな状況が確実に変わりつつあります。
今、日本企業、とりわけ大手企業を見渡すと、非常に優れた人材が内部監査を担っています。企業の経営層にも、内部監査の大切さが浸透してきたと感じています。一部銀行などでは内部監査部門を経験した経営トップも出てきているようです。また、監査役やグループ会社のトップなどにはさらに多くの出身者が輩出されています。
内部監査部門は会社全体を俯瞰する役目があります。ぜひとも若い方には、一度は監査部門に在籍し管理職としての目線でいろんな業務を見る経験をしてほしい。ジョブローテーションの中で、内部監査部門を経験するのは、非常に意味があることが実感できるはずです。
ここ日本でも、米国のように専門職として「内部監査人」が存在するケースも増えてきました。さらに内部監査人が増えてほしいところですが、さまざまな職場を経験するジョブローテーションには良い面もある。両方がうまくミックスしていくことが期待されます。
米国では「公認不正検査士協会」と公益通報で共同研究も
いずれにしても、内部監査がガバナンスを支えるという重要な役割を担うには、一人ひとりの内部監査人が自らの能力を高めるために研鑽を積むことが欠かせません。
われわれ日本内部監査協会はそのような目的で1957(昭和32)年に設立されました。米国に本部を置く国際団体の内部監査人協会(IIA)の日本代表機関として役割を担い、「公認内部監査人」(CIA)の試験も実施。さまざまな研修制度などを提供しています。今では会員数は1万を超えました。
ところで、会計・監査や労働、税制など、多様な分野でこのところ、国際的な法規制や基準が統一化される傾向があります。企業や団体は、これらの法規に適合するようにコンプライアンスの強化に努めなければなりません。
こうした中で、公認不正検査士(CFE)の役割に注目しています。CFEは不正や発見や抑止の専門家で、内外で発生する不正から組織を守るため、大変有益な資格だと感じています。
一方で、われわれが認定するCIAも、正当な注意を払って懐疑心を働かせて、内部監査を実施することを是としています。事務手続きの確認にとどまらず、法令違反や関係規範に抵触していないかという視点も求められているのです。
企業の内部監査部門の方々にはCIAとCFEの両方の資格を持っている人も多いと聞きます。これら資格を持った人が、コンプライアンス部門は言うに及ばず、マネジメント部門に配属されたり、取締役や監査役に就いたりするケースも増えているようです。CFEの資格を持った人たちは、内部監査にとっても大変心強いパートナーと言えるでしょう。
米国では、IIAとACFE(公認不正検査士協会)双方の本部が共同で「Building a Best-in-Class Whistleblower Hotline Program」(邦題「最高の内部通報制度構築に向けて」)と題する報告書を出しました。
日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)では昨年暮れ、日本語版を出しましたが、こうした団体レベルでの協力は、内部監査や不正検査の充実に役立ちます。いわんや、コーポレートガバナンスの実効性向上につながることは間違いありません。