髙田明・ジャパネットたかた創業者「ガバナンスを動かすのは他者への愛情だ」【新春インタビュー#5後編】
成長して、分配して、長崎を元気に
10年前に社長を引退して、佐世保、そして長崎という地域全体の振興にも微力ながら関わらせていただきました。
僕は平戸出身ですが、佐世保も故郷です。そこに企業があって地元の方々を雇用しながら、企業活動をしていること自体、地域貢献だと思っています。でも、それだけでは今は人の気持ちを盛り立てていくのは難しいのではないか……。そこで考えたのが、スポーツを通じて長崎を盛り上げていけないか、ということでした。
ところが、長崎にあった唯一のプロスポーツチームの「V・ファーレン長崎」が経営難で引き継ぐ企業がなければ潰れてしまうかもしれないという話が持ち上がりました。そうなると、長崎に関わる人の夢がひとつ消えてしまうことになる。
実は、そこで手を挙げると判断したのは息子の旭人(あきと)でした。V・ファーレン長崎を100%ジャパネットの子会社にできれば、再建に最善を尽くしてやりますと。株主総会では全員賛成でした。そして、2017年に僕がV・ファーレン長崎の代表取締役社長に就任しました。
その年に、J2からJ1への昇格を果たし、経営再建の見通しを立てて20年1月に退任しました。サッカーの社長をしている間、スポーツのもたらす力を改めて感じ、長崎の元気につなげることができると思いました。
企業は地域の中で活かされていて、成長だけではなく継続が何よりも大事じゃないですか。だから、企業の成長ってものには終わりがないんです。一時の成功も終わりではなく、やっぱり持続して成長をして、さらに分配をしていくことが必要だと思うんです。
「分配」っていうのは何だろうって考えた時に、富めるところが足らないところに富を出していく、そういう気持ちがなければいけないと僕は思います。税金を納めた後で残りを分配をして投資することによって、お金の価値をさらに生かして地域を活性化させながら、企業自体も成長し分配を維持していく。
ジャパネットとしてもそこを考え、現社長はさる24年10月に、自社のみで約1000億円もの資金を投じ、「長崎スタジアムシティ」を開業しました。
継続して、成長して、分配して、地元を元気にしていく。ジャパネットが長崎スタジアムシティで長崎を元気にすることで、そういう事例がどんどん各県に出来て、それが今度はアジア、世界にも拡大して元気になっていけば、これほど良いことはないじゃないですか。
社長を辞めた僕も含めて、今のジャパネットとして全社員が思っているのは、長崎の地にこういう企業を発生させてもらったということ。日本にこういう会社があるということは、恩返して一緒に幸せを享受していくことをやらないといけない――。
だから、社員たちはそれを誇りに思って、自分たちのモチベーションにもつなげていってくれてるんじゃないかと思いますね。
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