公訴棄却勝ち取った“当事者”の人知れぬ胸中【逆転の「国際手配3000日」#3】

「わくわくしている」人生の第3章へ

「10年ぶりの海外、12年ぶりのロンドン、30年ぶりのパリでした」

本村氏は今年7月、海外に渡航した。ラボバンク東京支店勤務時代、たびたび出張した、ロンドンの金融街シティーにオフィスを構える、ラボバンク・ロンドン支店も訪れた。

「自分が働いていたところに行ってもっと鮮明に思い出すかと思ったが、意外と思い出せない。どこに泊まっていたか、どこで食事をしていたか。みんなで行っていたパブに行こうと思っていたが、場所が分からなくて結局、行けなかった」

本村氏は自らを“浦島太郎”のようだと話した。昔のことが思い出せない自分に驚いた。感傷的な気分にもならなかったという。

「十年一昔じゃないけど、記憶って12年経つと頼りないなと。むしろそこで働いていた自分がウソみたい。オレ、ここにいたんだよなっていう感じ」

そして、こう考えている。

「記憶には限りがある中、他の人よりもいろいろなことを経験してきた分、そのキャパシティーを使ってしまったのかもしれない。悪い記憶だから、意識的に消していた面もあるかもしれない」

ラボバンク時代の英国人の元同僚に連絡しようかどうかと迷った、と本村氏は続けた。

「まず英国に入国できるか分からなかったというのと、また会ったら、いろいろと思い出すかな、みたいなのもあって。ちょっと悩んで結局、会わなかった」

本村氏の人生を、LIBOR事件に巻き込まれるまでが“第1章”、それ以降、起訴取り消しを勝ち取るまでの13年間が“第2章”とするなら、今は“第3章”と言えるかもしれない。

身をもって海外渡航に支障がなくなったことを確かめてきた本村氏は、抱負をこう語った。

「今までは日本にしかいられないと思っていたのが、人生設計は変わってきた。どこかの段階で海外に行くとか住むとかはあり得る。だから今、ちょっとわくわくしている」

ところが、そんな本村氏の身に厄介な問題が起きることになる――。

#4に続く