祝WS制覇! 大谷翔平の元通訳「水原一平」は安全ではない!? 米刑務所という“暴力世界”【海外法務リスク#5】

「刑務所レイプ撲滅法」施行も男性の“性被害”当たり前

米国南部ミシシッピ州の州矯正施設に保護拘置されていた男性、ジェイソン。その過酷な体験を綴った証言を、FOXニュースが2020年1月に紹介している。

https://www.foxnews.com/us/prison-rape-shadowy-unspoken-world

「居房を出てシャワーを浴びに行った時、彼の房に誘われた。そこでナイフを向けられた」

拒否したものの、ジェイソンは押し倒された。喉元にナイフを突き付けられ、声を出さないよう脅される。

「レイプされた。誰かに話したら殺すぞ、と言われた。自分の房に戻り、布切れで体をぬぐった」

これは州刑務所で起きた“事件”だが、連邦矯正施設でもこうした暴力行為は起こり得る。民営刑務所はコスト重視で人員不足のため、公営施設に比べ環境はさらに劣悪とされる。

ジェイソンはその後、「大量の錠剤を飲み、死のうとした」。が、ジェイソンは死にきれなかった。今では過酷体験を乗り越え、性被害から立ち直った人を指す「サバイバー」を自認する。「変化をもたらす」ため、黙ってはいないと誓っている。

人権保護団体ジャスト・ディテンション・インターナショナルの広報担当者はFOXニュースに対し、司法統計局(BJS)の集計を基に、米国の矯正施設(刑務所、拘置所など)では「毎年、被収容者20万人が性被害に遭っている」と指摘している。

矯正施設の運営を監視している団体、プリズン・ポリシー・イニシアチブが今年3月に公表した報告書によれば、連邦、州、自治体、未成年矯正施設など全米のすべての矯正施設に収容されている人数は190万人超。ということは、毎年10人にほぼ1人が性被害に遭っている計算になる。

米国の矯正施設において、レイプ被害を受けているのは、人数が多い分、大半が男性だ。

国際的な人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は2001年、「逃げ場所なし 米刑務所における男性のレイプ」と題する、400ページ近い報告書を公表した。

【ヒューマン・ライツ・ウォッチ】「逃げ場所なし 米刑務所における男性のレイプ」報告書
https://www.hrw.org/reports/2001/prison/report.html

それまで見過ごされてきた男性受刑者の性被害の実態を詳細に明らかにし、政府や議会に対し、矯正施設での性被害を防ぐための法律の制定を働きかけた。

そうした圧力もあって、2003年、「刑務所レイプ撲滅法」(PREA、読みは「プリア」)が成立。現在では、各矯正施設に性暴力事案の報告や防止策の導入が義務付けられている。その結果、報復の恐れがあることや恥辱のため泣き寝入りしていた被害者も申告しやすくなり、実態がある程度可視化されるなどの改善がもたらされた。