第三者委員会を“自己保身”の具とする日本の経営者たち
オアシスの攻勢は勢いを増していく。
2022年8月10日、フジテックは長嶋・大野・常松法律事務所の弁護士、小林英明を委員長として、第三者委員会を立ち上げた。ところが、小林もまたオアシスの格好の攻撃対象だった。
小林は、東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)の免震ゴム性能偽装の不祥事を受けて、同社の社外調査チームを率いたことがあった。2015年6月に調査報告書を公表したところ、ガバナンスの知見を磨いてきた有志の学識者や弁護士らで構成される「第三者委員会報告書格付け委員会」の評価にさらされる。結果は4名の委員から最低ランクの「F」と判定された。日本弁護士連合会の「第三者委員会ガイドライン」に基づいた審査で、いわば不合格と指摘されたのだ。
オアシスはこの事例に飛びついて〈東洋ゴムでは、小林氏の調査直後にも類似の不祥事が発生し、事態の解決に無駄な3年以上を要することになりました〉(「フジテックを守るために」2022年12月)と、小林の資質を問題視して、委員長を務めるフジテックの第三者委員会が関連当事者取引を公平に調査できない旨、指摘した。
ただし、東洋ゴムの調査報告書が他と比べて特段低劣なものだったわけではない。格付け委員会が評価した報告書のなかには、委員全員からF評価を受けたものもある。日本の経営者の多くは、企業の膿を出しきり再生を促すことで信頼回復を図る第三者委員会の効果を己の保身のために重視してこなかったのだ。
結局、小林が率いたフジテックの第三者委員会の調査は、内山が会長を解任された後の2023年4月3日に正式に打ち切られた。一度立ち上げられた第三者委員会が、最後まで報告書を出さなかったのは異例のことだ。
フジテックが内山の潔白を証明しようとする行動のすべては、自縄自縛の行為だった。日本企業の時代錯誤なガバナンス意識をアクティビストは巧妙に突いたのである。
なぜこんなことになったのか。それはオアシスの主張どおり、フジテックが創業家に支配された企業だったからに他ならない。
(文中敬称略・以下#6に続く)