オアシスによる社外取締役報酬アップと“寝返った社外取”
オアシスは、臨時株主総会で社外取締役の報酬をアップさせる3議案を株主提案しており、うち2議案が可決された。これにより社外取締役の基本報酬は1250万円となり、加えて株式報酬も受け取れることとなっていた。関係者によれば、「700万円程度だった社外の報酬は、2000万円ほどに増える」のだという。
真っ先にオアシス側に同調したのは、臨時株主総会で解任を免れた三品和広だった。三品は神戸大学大学院経営学研究科教授で、ニチレイ、不二製油、日本ペイントホールディングスの社外取締役を歴任してきた経営学者。前年に社外取締役に就任したばかりだった。三品を取り込んだ取締役会は、以後、スピーディにオアシスの要求に応えていった。
3月24日の取締役会では海野薫が議長に選定され、同時に嶋田亜子、三品、トーステンが指名・報酬諮問委員会に選定される。三品はその委員長に就いた。
この日の取締役会の様子を知るフジテックの元幹部は、こう証言する。
「三品の寝返りがすべてだった。緊急動議の議案のほとんどは5対4で可決された。この日、内山会長解任の議案も提出されたが、議事が混乱して採決に至らなかった。しかし、社長の岡田ら4人も結局は切り崩され、翌週の取締役会に持ち越された内山会長解任議案は、全会一致で可決された」
3月28日14時から開かれた取締役会で、内山会長解任が決議されると、すぐさま、三品をはじめオアシス側の5人の社外取締役は、内山の会長解任と新たに取締役議長と指名・報酬委員会の任命を報告し、声明を発表した。
〈我が国の上場会社に求められる最高水準のコーポレートガバナンスを忠実かつ確実に遵守するための第一歩〉
〈我々独立社外取締役5名は、(中略)ステークホルダーの皆様が抱くご懸念に対応するため、さらなる対策と改革を実行する所存です〉
同日、内山は取締役会に先立って、弁護士の河合弘之とともに東京・千代田区の司法記者クラブで会見を開いていた。オアシスやそのCIOのセス・フィッシャーに対して名誉棄損による損害賠償請求訴訟を提起するというものだった。内山は、オアシスが指摘した創業家とフジテックの公私混同の関連当事者取引について反論した。
「なんら違法なことはしていない。オアシスによる会社支配が進む現状を憂慮しており、あらゆる手段を講じる決意だ」
内山の決意は固かった。オアシスのネガティブキャンペーンに協力し内山を会長職から解任する共同不法行為を行ったとして、訴訟の対象は、海野や三品など社外5名にも広げられた。内山はオアシスらに総額15億4000万円の損害賠償を求め、会長解任を決めた取締役会決議の無効確認訴訟も起こした。
4月27日、自身が代表を務める資産管理会社ウチヤマ・インターナショナルなど、創業家株をかき集めて株主提案に打って出た。
攻守が逆転した創業家とアクティビストの攻防は、さる2023年6月21日に開かれた定時株主総会で「天王山」を迎えたのだった――。
(文中敬称略・以下#4に続く)