コスモHDvs.旧村上ファンド#2「議決権行使助言会社」が反対するコスモのMOM決議【株主総会2023】
筆頭株主で、村上世彰氏が関わる投資会社、シティインデックスイレブンスとの対立が続くコスモエネルギーホールディングス(HD)。コスモHDは6月22日開催の定時株主総会において、筆頭株主を排除する「マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)」の手法で、買収防衛策導入の是非を問う。MOMは2021年の東京機械製作所に続く、国内2例目のケースだが、#1記事ではMOMを取り巻く状況を伝えた。前出の企業法務に詳しい法曹関係者が続ける。
「今回、コスモHDがMOMを行おうとしていることには正直、驚きました。シティ側は、ここ半年程度はコスモHD株を買い増していないし、今後、追加取得する意思を表明していない。しかも、シティ側はすでに公式サイトなどを通じて情報を開示し、コスモHDの経営改善の施策を随時発表しています。一般株主にも時間をかけて情報提供を行ってきたわけです。そういう状況下で、東京機械と同じMOMの手法で買収防衛策導入の是非を問うても良いのか。法律家レベルでも疑問視する声は多い」
市場関係者もこう疑義を投げかける。
「時間的に見ても、今回のシティのケースは“強圧性”には当てはまらないのではないか。だから、買収防衛策の導入の可否については、一般の決議で行えばいい。コスモHD側はなぜMOMによる議決にするのか否か、説得力ある説明をしていないというのが、市場サイドの受け止め。コスモHD側としては、普通に決議してしまうとシティに負けるから、MOMをやるのではないか。逆に言うと、持ち合い株主を勘案すると、MOMで決議すれば、会社側への賛成が過半数を超えると読んでいるのでしょう」
MOMに慎重な姿勢を示す経産省の「買収指針案」
MOMについては国も対応に乗り出している。経済産業省の「公正な買収の在り方に関する研究会」が今年2023年4月に取りまとめた企業価値を高めるM&Aの活性化を促進するための新たな買収指針案。2022年11月に発足した同研究会はこれまでに計8回の論議を重ねてきた。今後は英語版も準備し、改めて意見公募した上で最終版を公表する予定だ。
経産省の指針原案では、「株主意思確認の例外的な措置」として「利害関係者以外の過半数を要件とする決議」に言及。もっとも、経産省は〈議決権を持つ株主(利害関係者以外の株主)は通常はマイノリティではない〉として「MOM」という略称は使用していない。
指針原案では、東京機械のケースを念頭に、〈これまでの司法判断の中には、対抗措置の発動についての株主総会での決議において、買収者、対象会社取締役および、これらの関係者の議決権を除外した議決権の過半数による株主総会の決議が許容された事例が存在する〉と指摘。そのうえで、次のような見解が示されている。
〈このような決議に基づく対抗措置の発動が安易に許容されれば、望ましい買収をも阻害する事態を招きかねない。また、決議要件を設定するのは対象会社であることからすれば、対象会社として承認が得やすいと考える決議要件が恣意的に設定されるおそれが存在する。したがって、このような決議に基づく対抗措置の発動が濫用されてはならず、これが許容されうるのは、買収の態様等(買収手法の強圧性、適法性、株主意思確認の時間的余裕など)についての事案の特殊事情も踏まえて、非常に例外的かつ限定的な場合に限られることに留意しなければならない〉
東京機械のように、急激な市場内買い付けというかなり限定されたケースで裁判所が認めた強圧性についても、指針案は次のように慎重姿勢を示している。
〈これまでの司法判断の中には、このような強圧性の問題を対抗措置の必要性を基礎づける一つの事情として考慮するものが存在する。他方で、強圧性の問題については、実際に強圧性が生じたことが観測された事例が明確に存在しないことを指摘する声や、市場内買付けによって一時的に株価が上昇した際に株式を売却する株主は、買収の実施による企業価値のき損を恐れて売却するのではないと指摘する声もある。また、買収手法に強圧性があるからといって、現行の法規制に必ずしも反することにはならない。個別の事案における経緯や買収者の行動、株主の行動等に関して具体的な検証を行うことなく、市場内買付けや部分買付けであることの一事をもって強圧性の問題を強調し、対応方針や対抗措置を用いることを安易に正当化することは望ましくない〉
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