アクティビスト「丸木強」が振り返る“注目総会”問題の核心#2【株主総会2023】
「任天堂創業家ファンドvs.東洋建設」の画期的勝利
――一方、アクティビストによる株主提案が可決されたケースもありました。海洋土木大手の東洋建設の株主総会です。会社側と対立していた大株主が提案した取締役候補9人のうち7人が選任され、株主提案の取締役が取締役会の過半数を占めました。大株主は同社の発行済み株式の約28%を持つ任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」です。
丸木:株主側が勝ったというのは画期的で、素晴らしいことです。YFOは東洋建設に対して1株1000円でのTOB提案を行ってきました。しかしながら、株価は総会前から1000円を超えていました。今後TOBを行うのか、その価格は1000円なのかもっと高い価格になるのか、関心を持っています。
一方、我々には運用を託している投資家が後ろに控えていますので、IRR(内部収益率)がどれぐらいになるのかは常に考えていなければいけないわけですが、YFOのように自分たちの財産だとすると、また違う発想ができるかもしれない。我々とはタイプの違う株主です。今後、どのように投資のリターンを実現していくのかということについては、注目していきたいと思っています。
――また、英国の投資運用会社「アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)」がインフラ設備メーカー、NCホールディングス(NCHD)に行った株主提案について、8議案のうち3議案が株主総会で可決されました。さらに別の3議案も、特別決議事項のため、可決はされなかったものの、過半数の支持を得ました。このケースについては?
丸木:その内容は剰余金処分の決定方法の変更や増配で、特に増配の議案が通ったにもかかわらず、株価は反応していません。株主提案には大きく分けて2種類あって、株主提案が通って株価が上がる提案と、株価が上がらない提案――。後者は、株価には直接関係はないけれど、株主の考え方として行うべきだという提案です。
いずれにしても、株主提案を行って、現実に議案が通ったということはとても素晴らしいことです。株価が上がらなかったというのは少し残念だったと感じています。
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