4月にはホンダ副社長も「不適切行為」で辞任
「不適切行為」と言えば、最近では、今年4月にホンダ(本田技研工業)が、同種の事案で副社長(当時)の辞任を発表したことが思い起こされる(本誌記事参照)。こちらは〈業務時間外の懇親の場〉における不適切行為だったというが、各種報道によると、クレハの田中氏も業務時間外での行為だった。
辞任へ至るプロセスについても、当然というべきか、相似している。指名委員会等設置会社のホンダでは監査委員会が主導して調査を進めたとリリースされており、監査役会設置会社のクレハでも同様、監査役が中心となった調査だったとしている。
ただし、ホンダは処分プロセス等についてリリースでの記載はないが、クレハは先述のとおり、指名委と報酬委が処分内容を審議したことに軽く触れている。
クレハ18年6月に取締役会の任意の諮問機関として指名委と報酬委を設置。24年3月期の有価証券報告書によると、両委員会メンバーは4人で、社長の小林氏以外はすべて社外取締役で構成。元味の素副社長の戸坂修氏、元三菱マテリアル副社長の飯田修氏、カルビー常勤監査役の岡藤由美子氏の3人の社外取が全員、両方の委員に就任している。
ちなみに今年6月の定時株主総会で戸坂氏が退任、後任には元雪印メグミルク社長の西尾啓治氏が社外取締役に就任する予定だ。
田中氏が辞任し、結果、同総会の取締役候補者は7人から6人になったが、女性は社外取の岡藤氏のみ。また、監査役3人(常勤・社外)についても女性は新任の弁護士1人。クレハの6月以降の新体制は、監査役を含む役員9人中、女性は2人という状況だ。
一方、クレハについてはアクティビスト(物言う株主)で知られる村上世彰氏の長女、野村絢氏が10%超を保有する2位株主となっている(昨年9月末現在)。コーポレートガバナンスを糸口に圧力を強めるのは、アクティビストの常套手段というのが通り相場ではある。
役員の不適切行為が全社的なガバナンス問題まで一気に昇華されるかどうかは別として、経営陣にはプライベートも含めた厳しい緊張感が求められるのは言うまでもない。
17:30【クレハ】取締役の異動(辞任)に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250516556802.pdf