【2025年2月14日「適時開示ピックアップ」】ナ・デックス、トーシンHD、電通、第一生命HD、花王、ガンホー
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2月14日の東京株式市場は4日ぶりに反落した。日経平均株価の終値は前日比312円安の3万9149円だった。為替相場が円高・ドル安に振れたことを嫌気され、利益確定売りが出た。そんな2月14日の適時開示は、2025年3月期第3四半期決算発表の実質的な最終日とあって2258件と多かった。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
機械商社「ナ・デックス」循環取引で“チェック体制機能せず”と調査報書
東証スタンダード上場で機械商社のナ・デックス(名古屋市)は、循環取引疑惑を調べていた特別調査委員会の報告書を公表した。
舞台となったのは北九州営業所で、ここで勤務していた元主任が間に数社を入れて循環取引を主導していたという。2020 年7月から24年10月の間、特定の会社を絡ませた不正取引の額は合計で1億2045万円などと特定している。
驚くことに、伝票処理を担当していた派遣社員は、印影の形が不自然なことに気づくなど、取引自体についても疑問を持っていたが、漫然と決済処理を行っていたという。
さらに、北九州営業所で23年5月から正社員はこの元主任のみで、同年10月に正社員1人が入社したが、それはこの元主任の子どもだったという。報告書は「上司の監督及び従業員間の相互監視機能の脆弱さ」を循環取引の理由のひとつに挙げている。
【ナ・デックス】特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214576207.pdf
携帯電話代理販売店「トーシンHD」キャッシュバック遅延で第三者委報告書公表
東証スタンダード上場で携帯電話の販売代理店を営むトーシンホールディングス(HD、
東京・港区)は、販売促進策のキャッシュバックが適正に支払われていたかどうかを調べていた第三者委員会の調査報告書を公表した。
発端は、匿名のメールで「1億円以上のキャッシャバックの未払い金がある」という情報提供があったが、報告書によると、2023年3月頃からキャッシュバックの金額が増加し、会社の預金残高が不足する可能性が出てきたため、業務に影響が出ないように一部を翌月以降の支払いに繰り延べていたという。
その結果、キャッシュバックの支払いまでの期間が23年春頃は3カ月ほどだったが、徐々に長くなっていき、24年は9カ月後にまでなっていたという。
調査委は、取締役会で議論や意見交換された形跡はなく、結果としてキャッシャバックの管理・調整の継続を容認したと指摘。取締役会にリスク評価など経営上の重要事項について実質的な議論を求めた。また、内部監査室のモニタリング機能の向上などの再発防止策も提示した。
【トーシンホールディングス】 第三者委員会の調査報告書受領について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214576286.pdf
「電通」が一転して大赤字
東証プライムの電通グループは2024年12月期決算を発表した。売上高は1兆4109億円で、最終損益は1397億円の赤字になった。海外事業でのれん減損による損失額が2101億円に上ったためだ。
昨年11月14日(第3四半期決算の発表)の時点では、売上高1兆4000億円で916億円の最終利益を予想していただけに、市場には驚きが広がった。
また、海外事業で構造改革の費用として500億円を充てると発表。人員の適正化やシステムの構築に使う考えだ。
かつては広告界のガリバーとして君臨した電通だが、とりわけ海外子会社の動向に引きずり込まれる形で業績が不透明化している。グループガバナンスは大丈夫なのか。
【電通グループ】2024年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250207566690.pdf
海外事業における構造改革の実施および費用計上の見込みに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214575666.pdf
「第一生命HD」が2026年4月1日から「第一ライフグループ」に社名変更
東証プライムの第一生命ホールディングス(HD)は、2026年4月1日から社名を「第一ライフグループ」に変更すると発表した。海外に進出し、保険以外の分野にも注力していく考えだ。
【第一生命ホールディングス 】当社及び子会社の商号変更に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250213574586.pdf
「花王」がオアシスの株主提案に反対
東証プライムの花王は、香港系アクティビスト(物言う株主)のオアシス・マネジメントの株主提案のいずれにも「反対する」と発表した。
オアシスは新たに社外取締役として、マーケティングやデジタルの専門家ら5人を提案していた。しかし花王は、オアシス側の株主提案について「各候補者は総じて日本のビジネス文化や消費者ニーズに対する直接的な経験が不足している」と判断。
そのうえで、元日本マクドナルドホールディングス社長のサラ・カサノバ氏らを社外取締役に充てる会社提案について「その陣容は規模及びスキルバランスにおいて極めて適切である」とした。
株主総会は3月21日に開催予定だが、わが国トイレタリー企業の巨人と好戦的アクティビストの角逐が激化している。
【花王】株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214576243.pdf
「ガンホー」がファンドの株主提案に反対
東証プライムのガンホー・オンライン・エンターテイメントは、和製アクティビストファンドのストラテジックキャピタル(SC)から受けていた株主提案について、全議案に反対することを発表した。
SCは、ガンホーの森下一喜社長の3億4000万円(2023年)の報酬を問題視し、営業利益や時価総額がこの10年間で低下しているのに、報酬は大幅に上昇していると批判。具体的な経営指標を用いた業績連動型の報酬体系に移行するよう提案していた。
これに対してガンホーは、森下社長の業績に対する貢献を十分に理解しないまま行われた提案と批判し、「取締役の報酬額等の決定続きに係るガバナンスは実効的に機能しておりその開示の方法も適切」と反対した。
株主総会は3月28日に開催予定。
【ガンホー・オンライン・エンターテイメント】株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250214575793.pdf
(平日連載、2月17日公表分に続く)
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