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【2025年1月6日「適時開示ピックアップ」】アビスト、オリンパス、モダリス、MTG、アドバンスクリエイト、ツルハHD、日本製鉄

大発会が行われた1月6日月曜日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は、前営業日の昨年12月30日から587円値下がりし、3万9307円で終えた。市場では、トランプ次期米大統領の政策を見極めようという警戒感が強まって、売り優勢となっているとの見方が支配的だ。そんな6日の適時開示は374件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。

「アビスト」雇用調整助成金の不正受給で決算を訂正

東証スタンダード上場で、自動車向け機械部品の設計開発アウトソーシンのアビスト(東京・三鷹市)は、2021年9月期から3年分の有価証券報告書を訂正した。

コロナ禍で受け取った雇用調整助成金の一部で不正受給が発覚し、この3年分すべてを返還。このため、21年9月期の経常利益は当初よりも1億6400万円少ない4億3900万円に訂正した。 なお、この問題をめぐって同社は、社外取締役で監査等委員の江幡奈歩弁護士(阿部・井窪・片山法律事務所)を委員長とする特別調査委員会を立ち上げ、昨年12月に内部通報制度の不備やコンプライアンス意識の低さが指摘された経緯がある(本誌既報)。

【アビスト】過年度の有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546204.pdf

「オリンパス」中国・深圳コンサル贈賄問題“株主代表訴訟”で原告控訴

東証プライムのオリンパスは、中国・深圳のコンサルタントをめぐる株主代表訴訟で、原告の株主側が東京高裁に控訴したと発表した。

このコンサルタントをめぐっては地元で贈賄疑惑が報道されことを受け、一部株主が総額16億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を提起。裁判ではオリンパスの内部統制システムなどが問われたが、一審の東京地裁は、12月5日に原告の訴えを棄却していた(本誌既報)。

今回、控訴審で再び被告となったのは、現役では代表執行役会長の竹内康雄氏、そのほか、元社長の笹宏行氏、三井住友銀行出身で元会長の木本泰行氏、三菱UFJ銀行出身で元専務の藤塚英明氏ら元取締役・監査役の合計9名。

東京高裁での裁判の行方は不透明だが、今一度、オリンパスのコーポレートガバナンスの在り様が問われることになる。

【オリンパス】株主代表訴訟の控訴に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546290.pdf

創薬「モダリス」取引先メールが乗っ取られて詐欺被害9万ドル

東証グロース市場に上場し、創薬ベンチャーでゲノム編集をてがけるモダリス(東京・中央区)は、資金が流出する詐欺被害が発生し、9万米ドル(約1400万円)の損失が出たことを公表した。

2023年の初頭、取引先のA社の名前を騙ったメールにより支払い依頼があり、代金を指定の口座に振り込んだという。その後、A社の取引担当者のメールアカウントが何らかの方法で乗っ取られていたことが分かったとしている。

なお、電子的詐欺行為の保険請求を行い、一定額の補償が認められたものの、最終的に9万米ドルの損失が確定した。ただ、銀行側に犯人などに関する情報の取得を要請したものの、守秘義務を理由に得られていないという。

リスクマネジメントの難度が上がっていることだけは間違いない。

【モダリス】当社子会社における資金流出被害の発生と特損計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227545975.pdf

「MTG」「アドバンスクリエイト」「ツルハHD」有価証券報告の提出遅延のワケ

東証グロース上場で健康美容機器のMTG、東証プライム上場で保険代理店業等を営むアドバンスクリエイト、ドラックストアのツルハホールディングス(HD)の3社はそれぞれ、有価証報告書の提出が遅れると発表した。3社とも金融当局の承認を得たとしている。

当然ながら、3社に関係性はなく、下記リリースでも理由詳細を説明していないものの、いずれも不適切な売上金の計上や引当金の不足といった問題が発覚し、特別調査委員などを立ち上げ対応に当たってきた企業。

MTGは完全子会社のハウスエージェンシーにおける費用の過少計上、アドバンスクリエイトは代理店手数料の計算ミス、ツルハHDは引当金計上で監査法人から誤りを指摘された経緯がある。

確かに、ディスクロージャーには定式があるのは分かるが、どうして有報提出が遅延するのか、もう少し掘り下げた内容を適時開示に記載すべきではないか。

【MTG】2024年9月期有価証券報告書の提出期限延長に係る承認のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241227545749.pdf
【アドバンスクリエイト】第29期(2024年9月期)有価証券報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546910.pdf
【ツルハホールディングス】2025年2月期半期報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250106546691.pdf

「日本製鉄」USスチールと米大統領令で提訴、橋本会長は“強気会見”

東証プライムの日本製鉄は、米国のバイデン大統領によるUSスチールの買収の禁止命令を出したことに「不当介入だ」と反発し、USスチールとともに是正を求めて提訴したと発表した。

バイデン大統領は、日鉄による買収が米国の国家安全保障を害するとして大統領令を出した。これに対して日鉄側は「バイデン大統領は、全米鉄鋼労働組合(USW)の支持を得て、自身の政治的目的を達成するために法の支配を無視した」と批判している。

日鉄は7日午前9時から記者会見を開き、買収を主導したとされる橋本英二会長兼CEO(最高経営責任者)は「当社のパートナシップがUSスチールの競争力強化と発展する最善の方法で、産業全体の利益に叶う」「米国の国家安全保障を強化するもの」と訴え、「あきらめる理由も必要もない」と勝訴に強気の姿勢を崩さなかった。

記者から勝訴の困難性を問われたが、橋本会長は訴訟に一定の時間がかかることを示唆しながら「これからのことだ」などとかわし、1月20日に就任するトランプ新大統領による政権にも働きかけていく考えを示した。

日鉄がUSスチール買収に費やしてきたコストを考えると、今後の同社のコーポレートガバナンスが問われる事態も想定され、橋本会長の強気もむべなるかな、ではある。

【日本製鉄】(開示事項の経過)米国 United States Steel Corporation の買収について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250105546184.pdf

(平日連載、1月7日公表分に続く

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