【2024年12月10日「適時開示ピックアップ」】ピジョン、きょくとう、シンワワイズ、トプコン、プロトコーポ
12月10日火曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価の終値は、前日比207円高い3万9367円。円安・ドル高の流れを好感した。そんな10日の適時開示は147件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
育児用品「ピジョン」架空取引不正を受け“再発防止策”
東証プライムで育児用品大手のピジョンは、今夏に発覚した元従業員の不適切な取引の反省から、再発防止策を策定したと発表した。
元従業員は架空取引と転売などを繰り返しており、納品の際、発注担当者以外の役職員が検収に立ち会うなど、手続きを見直した。また、コンプライアンス意識の向上を目的として研修などを実施する。
経営責任を明確にするため、北澤憲政社長が報酬月額1カ月分を10%カットする。
再発防止策は不祥事企業の必須課題だが、過剰な細則主義は役職員の“コンプライアンス疲れ”を助長しかねないとの指摘もある。効果もさることながら、日常業務に即した対応策が求められる。
【ビジョン】再発防止策の策定及び役員報酬の減額について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241210536366.pdf
クリーニング「きょくとう」雇用助成金の不正受給等で課徴金
東証スタンダードでクリーニング店を展開するきょくとうは、証券取引等監視委員会が金融庁に対し、1500万円の課徴金納付命令を出すよう勧告が出たと発表した。
きょくとうでは昨年、雇用助成金の不正受給が発覚し、有価証券報告書を訂正していた。
「関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしますことを、心より深くお詫び申し上げます」とコメント。定型文的コメントと言えるが、コーポレートガバナンス上の問題はなかったのか、原因究明が求められる。
【きょくとう】証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告についてのお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241210536521.pdf
本誌既報の美術品取引「シンワワイズHD」元社長が取締役も辞任
本誌でもたびたび既報の東証スタンダード上場で美術品取引サービス、Shinwa Wise Holdings(シンワワイズホールディングス=HD)は、取締役の倉田陽一郎氏が「一身上の都合」を理由に辞任したと発表した。子会社の代表取締役も辞任した。
シンワワイズでは、売り上げの時期や絵画などを対象にした税効果会計に関して不適正な会計処理が発覚し、有価証券報告書を訂正。これを受け、倉田氏は今年11月15日付で社長を辞任していた。ただ、シンワワイズの14.24%の株式を持つ大株主だ。
同社では12月上旬にも内部統制の整備にあたるガバナンス委員が辞任するなど混乱が続いている。
【Shinwa Wise Holdings】当社取締役の辞任及び主要子会社の代表取締役の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241210536417.pdf
「トプコン」ブルームバーグ“非公開化”報道を追認?
東証プライム上場で、医療や農業、建設向けの測定機器を製造・販売するトプコンは、「当社に関する一部報道について」とのリリースを出した。
同社のリリースによると、非公開化に向けて投資ファンドとの入札プロセスに入ったという報道があったとし、「当社の発表に基づくものではありません」としながらも、「企業価値向上に向けた検討のなかで、報道のような施策案に限らず、幅広に検討しております」。
明示はしなかったものの、非公開化も検討対象の中に入っていることを事実上認めた格好。事実、12月10日午前に米ブルームバーグが《トプコンが非公開化へ、JICやKKRなどが買い手候補-関係者》と報じていた。
【トプコン】当社に関する一部報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241210536425.pdf
グーネット運営「プロトコーポレーション」不正誘発の組織風土は?
東証プライム上場で、中古車の情報サイト「グーネット」を運営するプロトコーポレーションは、元事業部長による不適切な取引を調べていた特別調査委員会がまとめた報告書を受け取ったと公表した。
この元事業部長は架空取引を繰り返し、架空の売上額は19億5000万円に及んだ。委員会は「この社員の場合、予算達成のプレッシャーが本件の動機となっていた」と判断したが、不正を誘発するような組織的な風土については否定した。
この元事業部長は11月30日付で懲戒解雇された。
【プロトコーポレーション】特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241204534224.pdf
(平日連載、2024年12月11日公表分に続く)
関連記事
ピックアップ
- 【2024年12月10日「適時開示ピックアップ」】ピジョン、きょくとう、シンワワイズ、トプコン、プロ…
12月10日火曜日の東京株式市場は続伸した。日経平均株価の終値は、前日比207円高い3万9367円。円安・ドル高の流れを好感した。そんな10…
- エジソン「私自身も多くのモノを盗みながら生きてきた」の巻【こんなとこにもガバナンス!#39】…
栗下直也:コラムニスト「こんなとこにもガバナンス!」とは(連載概要ページ) 「産業と商業では人のモノを盗むというのが相場だ。私自身も多くのモ…
- 【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#5】フランス電力EDF、イスラエル・ベゼック、ノルウェー政府年…
フランス電力、英原発4カ所の稼働を1~2年延長 フランス電力(EDF)は、英国で運営している原子力発電所4カ所の稼働を1~2年延長する。エネ…
- 【米国「フロードスター」列伝#3】偽ファンドマネージャー妻の片棒を担いだ不正共犯“主夫”の決断…
本誌「Governance Q」と公認不正検査士協会(Association of Certified Fraud Examiners=AC…
- 【ベーカー&マッケンジー 井上朗弁護士が徹底解説】トランプ政権は日本企業のガバナンスにどう襲…
ベーカー&マッケンジー法律事務所・井上朗弁護士 ドナルド・トランプ次期米政権の政策の輪郭が、見え始めてきた。「アメリカ・ファースト」…
- オリンパス2人の“外国人トップ”に見る「ダイバーシティ」の深淵【八田進二のガバナンス時評#20】…
八田進二:青山学院大学名誉教授 違法薬物「MDMA」を譲り受けた容疑で、オリンパスの社長兼CEO(最高経営責任者)だったシュテファン・カウフ…