【2024年12月9日「適時開示ピックアップ」】クシム、ヨシムラ・フードHD、ユーグレナ、日本ケミコン、オリックス
12月9日月曜日の東京株式市場は小幅に反発した。日経平均株価は、前営業日から69円値上がり、3万9160円で終えた。ハイテク株が中心の米ナスダックが堅調で寄り付きは高かったが、その後は値を下げ、一時、前営業日の株価を割り込んだ。そんな9日の適時開示は178件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
暗号資産「クシム」取締役の情報漏洩疑惑で調査委設置、当人は否定
東証スタンダード上場で、ブロックチェーン技術を得意とし、暗号資産の交換所を運営するクシム(東京・港区)は、社内調査委員会を設置したと発表した。
クシムは11月25日、情報漏洩の疑いがあるとして取締役の田原弘貴氏に対して辞任勧告をしていた(本誌既報)。調査委員会は、田村氏の疑惑に関する事実調査を進める。
委員長は、社外取締役監査等委員の望月真克氏で、委員は渥美坂井法律事務所シニアパートナーの水上高佑弁護士と、同パートナーの清水真一郎弁護士の2人が務める。
クシムの株主でもある田原氏はこの問題で、サイトを立ち上げて反論している。
【クシム】(経過開示)社内調査委員会設置に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241209535937.pdf
「ヨシムラ・フードHD」ALPS処理水で東電から賠償金
東証プライム上場で中小の食品会社のグループ化を推し進めるヨシムラ・フード・ホールディングス(HD、東京・千代田区)は、東京電力ホールディングスから8億4800万円の賠償金を受け取ったことを明らかにした。
実際に受け取ったのは連結子会社のワイエスフーズで、北海道のホタテやサケなどを扱っている。ヨシムラは特別利益として計上する。
2023年8月に始まったALPS処理水放出に伴うもので、ヨシムラは「外国政府の日本産水産物の輸入停止措置等による被害の損害賠償金」として説明している。ALPS処理水をめぐっては、中国が日本の水産物を全面的に禁輸措置にし、香港も東日本の10都県の水産物を禁輸にしている。
【ヨシムラ・フードHD】東京電力ホールディングス株式会社からの賠償金受領による特別利益の計上並びに2025年2月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241209535736.pdf
バイオ燃料開発でミドリムシの「ユーグレナ」が増資
東証プライム上場でミドリムシ活用など、バイオベンチャーとして知られるユーグレナは、マレーシアのバイオ燃料の工場の建設に関連し、子会社の増資に応じることを明らかにした。ユーグレナの子会社で特別目的会社の「Euglena Sustainable Investment Limited」に対し、新たに71億を出資する。
このプロジェクトは、マレーシアとイタリアの企業と共同で、食物などを使って航空機向けのバイオ燃料をつくり、商業ベースに乗せていく考えだ。バイオジェット燃料のSAF(持続可能な航空燃料)は脱炭素の切り札として注目されている。
ただ、ユーグレナは2005年8月の創業から来年で20年。SAFの実現はいつになるのだろうか。
【ユーグレナ】マレーシアにおけるバイオ燃料商業プラントの建設・運営プロジェクトへの出資参画に向けた 当社子会社である海外特別目的会社の増資(特定子会社化)に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241209535849.pdf
「日本ケミコン」シンガポール裁判所で提訴される
東証プライム上場でアルミ電解コンデンサの日本ケミコン(東京・品川区)は、シンガポールの子会社がシンガポール国際商事裁判所において提訴されたと発表した。
原告はマレーシアの企業で、同社の製品に不具合が出ているのは、日本ケミコンのシンガポール子会社から調達した部品が原因としている。原告は276億円の損害賠償の権利があると主張しているという。
日本ケミコンは「先方の主張についてはまったく承服しかねる」とコメントし、賠償が否定されるよう裁判で主張していく考えだ。
【日本ケミコン】シンガポールにおける当社シンガポール子会社に対する訴訟の提起に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241209535738.pdf
「オリックス」で14年ぶりの社長交代も“あのチェアマン”は健在
東証プライムのオリックスは、来年1月1日付で新社長に取締役で高橋英丈・専務執行役(53)を昇格する人事を発表した。14年ぶりの社長交代で、井上亮社長(72)は代表権のある会長になる。
高橋氏は1993年4月に入社し、事業投資本部企画本部長や、環境エネルギー本部長などを歴任。グループのマンションデベロッパー、大京の執行役も務めた。
ちなみに、30年以上にわたり社長・会長を務め、事実上の創業者とも言える宮内義彦氏(89)は今も「シニア・チェアマン」を務めている。
オリックスのコーポレートガバナンス報告書によると、シニア・チェアマンの業務について、「財界活動等対外活動」と記し、非常勤で報酬があり、任期は1年。また、「意思決定を行う会議体へも出席しておらず、当初の業務執行に関与していない」という。報酬は年300万円が上限だそうな。
【オリックス】代表執行役の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241205534756.pdf
(平日連載、2024年12月10日公表分に続く)
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