【2024年11月5日「適時開示ピックアップ」】シンワワイズ、ライトオン、クラウドワークス、コニカミノルタ、日本信号
11月5日の東京株式市場は3日ぶりに反発した。日経平均株価は前日から421円値上がり、3万8474円で引けた。この日から東証の取引時間が30分間延長して15時30分までとなった(前場=9時~11時30分、後場=12時30分~15時30分)。場が閉まる15時半に合わせて決算会見をする企業も目立った。そんな5日の適時開示は380件で、この中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
美術品取引「シンワワイズ」不適切会計を受けて10本もの開示
東証スタンダード上場で、美術品取引サービスのShinwa Wise Holdings(シンワワイズホールディングス=HD)は、2019年5月期~22年5月期の有価証券報告書を訂正した。黒字化を達成するため、売却と買い戻しを繰り返すなど、子会社で不適正な会計処理が発覚したためで、「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」「有価証券報告書等に係る監査報告書の限定付適正意見に関するお知らせ」など計10本のリリースを出した。
同社は美術品競売のシンワアートオークション(1989年設立)が前身。23年5月末時点の筆頭株主は鶏卵事業のイセ食品の創業者、伊勢彦信氏で18.02%を保有していた。伊勢氏はアンディ・ウォーホールなどとの交友がある美術品蒐集家として知られたうえ、最近では、秋篠宮や小室圭・眞子さん夫妻との関係も取り沙汰された。ところが22年3月、長男の伊勢俊太郎氏らが申し立てる格好でイセ食品は会社更生手続きに入り、現在の筆頭株主はミネルヴァ投資顧問代表などを経て、01年にシンワの社長となった倉田陽一郎氏で、18.59%を保有している(24年5月末時点)。
【シンワワイズHD】過年度有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度決算短信訂正に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241031507431.pdf
カジュアル衣料品「ライトオン」が減資で“中小企業”に
東証スタンダードに上場し、ジーズンなどカジュアル服専門店のライトオン(東京・原宿)は、減資することを決めた。65億2000万円の資本金のうち、98%に当たる64億2000万円を減らす。資本金は9999万円と1億円を割り込み、今後は税制面などで有利な「中小企業」として分類される。ちなみに、2023年8月末現在で667名の正社員と373店舗を抱えていたが、大量閉店などが取り沙汰されていた。実際、ライトオンは業績が悪化し、24年8月現在で152億円の欠損の状態。減資分は欠損の補塡に使う。同社は、アパレル大手のワールドなどが株式の公開買い付け(TOB)を実施している。
【ライトオン】資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241029505549.pdf
「クラウドワークス」QUOカードで株主優待
東証グロース上場で、ネット上で仕事を受発注するサービスを展開するクラウドワークスは、株主優待制度の拡充を公表した。今回、新たに300株以上を1年以上持っている株主にQUOカード1万円分を贈呈する。基準日は2025年12月末日。QUOカードの配布には、「会社のコストが増えるだけだ」「実質的に配当にあたる。外国人は使いづらい」といった疑問も投げかけられている。なお、クラウドワークスの11月5日の終値は1348円で、長く無配が続いてきたが、24年9月期の年間配当は18円となった。
【クラウドワークス】株主優待制度の拡充に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241105511506.pdf
「コニカミノルタ」が米遺伝子検査企業を売却
東証プライムのコニカミノルタは、米国の遺伝子検査企業アンブリー・ジェネティクスを売却する。売却価格は6億ドル(会社側発表840億円。現在のレート910億円)。データ・AI(人工知能) 活用による精密医療テクノロジーを提供する米国のヘルスケア企業、テンパスAIに譲渡する。アンブリーは、コロナ禍の中で来院者が減少し、医療スタッフの不足もあって需要が当初の想定を下回るなどしていた。現在、コニカミノルタは有利子負債の圧縮に努めている。
【コニカミノルタ株】連結子会社の異動(株式譲渡)及び 株式譲渡に伴う非継続事業からの利益の計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241105510439.pdf
「日本信号」純資産4分の1を占める“政策保有株”を縮減方針
東証プライムで鉄道の信号保安システムなどを手がける日本信号は、政策保有株の縮減方針を発表した。同社は、事業上の協力関係の維持などを目的に鉄道会社などの株式を保有している。2024年3月末時点で、60社分計249億円に及ぶ。これは日本信号の純資産26%に当たり、29年3月末に20%以下にする。日本独自の慣行「株式持ち合い」に反対する米国の議決権行使助言会社ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)は、政策保有株式の金額が純資産の20%以上の場合、経営トップである取締役の選任に反対を推奨している。
【日本信号】政策保有株式の縮減方針についてのお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241031508151.pdf
(平日連載、2024年11月6日公表分に続く)
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