「牧師の横領」での2度目の逮捕と追加刑
このレナー株の件で09年3月、ミンコウは証券詐欺の共謀で起訴され、有罪を認めた。裁判所は彼に5年の禁固刑と、レナーへの5億8350万ドルの返還を命じた。こうして、彼は再び獄中の人となる。
さらに、この2度目の刑期中である14年、ミンコウのさらなる悪事が露呈した。それは、01年から11年にかけて行われた、教会とその信徒からの300万ドル以上に及ぶ横領だった。
夫人を亡くした男性信者から故人を偲んで寄付された7万5000ドルを自分のものにし、10代の孫娘を育てている年配の未亡人から慈善団体に送るとして30万ドルを騙し取り、その慈善団体からのものとされるニセの感謝メッセージを捏造する始末であった。
教会に代わって不正な銀行口座を開設、その小切手に署名を偽造、教会の正式な口座から資金を引き出し自分の銀行口座に入金、教会のクレジットカードを無断使用、そして、IRSに対し、89万ドル以上の未申告所得に25万ドル以上の課税漏れ……と信者からの信頼と宗教心を悪用し、数多の不正を働いていたのだった。
判事は「卑劣で許しがたい犯罪」とし、司法取引で認められた最高刑である懲役5年を言い渡し、340万ドルの賠償金の支払いを命じた。ミンコウは服役期間がさらに5年追加され、合計約10年の服役となったのだった。
「元詐欺師」の十字架を背負う今
19年6月、ミンコウは10年の刑期を終えて釈放された。
近年の報道によれば、ミンコウは再び自由の身となったものの、過去の影響から完全に逃れることはできていないようである。冒頭で紹介した映画や番組以外にも、ネット配信動画など、さまざまなメディアに「元詐欺師」として取り上げられている。
一度は輝かしい未来を手にしたが、短期的な利益を追い求めた結果、長期的な信頼と尊敬を失ってしまった。相変わらずメディアに露出し自己の過去を反省しつつ、新たな道を模索しているようだが、地に落ちた信頼を取り戻すことは非常に難しい。
ミンコウの成功と欺瞞、そして私たちがそこから学べる教訓は何なのか――。彼の波乱万丈の人生は、詐欺行為の心理的動機や、それが社会と個人に与える影響について深く考えさせるものである。