【米国「フロードスター」列伝#10最終回前編】「高校生起業家」不正のピカレスク《前編》:自作自演で最年少上場を果たした「ウォール街の寵児」

ZZZZベストの実態と「不正」のファーストステップ

ミンコウの成功は、単なるビジネスセンスによるものではなかった。それどころか、実際はカーペットクリーニング業界では熾烈な競争が繰り広げられ、若き起業家は資金繰りに四苦八苦していた。社会の喝采とは裏腹に、わずかな利益を上げているだけ、しかも経営者が未成年ということで、地元の銀行は融資を拒否していたのだ。

これはミンコウにとって、会社を立ち上げたときには思いもよらない事態であった。融資が得られなければ、事業を拡大できないばかりか、支払いすらままならず、破綻してしまう。

そこでミンコウが頼ったのが、不正であった。

「チェック・カイティング」という、小切手の振り出しと引き落としのタイミングで生じるタイムラグを悪用した手法もそのひとつだ。彼は、ゴーストアカウント(実在しない顧客の口座)から小切手を切って、あたかも顧客からZZZZベストに支払っている体を装い、預金残高の水増し行為に手を染めた。そんな不正以外にも、祖母の宝石を盗むなど、見境なく不正行為を行い、ZZZZベストの急成長を装っていたのだった。

売上高と利益水増しのためペーパーカンパニー

ミンコウは、ZZZZベストの主要な収益源として、実際には存在しない火災や水害からの修復作業をでっち上げることで売上高と利益を大幅に水増しするスキームを企てる。

この詐欺を行うために、彼はアジャスター(保険調査員)の人物と組んで、「インターステート・アプレーザル・サービス」というペーパーカンパニーを設立する。

ミンコウは、この保険調査員に「銀行やそのほか利害関係のある第三者に対して、ミンコウの会社が保険の損害修復の契約を受けていることを電話で確認するだけで、週に100ドル支払う」と持ちかけた。のちにこの調査員はミンコウが保険業界の煩雑な業務を避けたいのだと信じ、協力したと弁解する。しかし、何かをするだけの“簡単な仕事”にはウラがある。これも例外ではなかった。

ミンコウはこのペーパーカンパニーを隠れ蓑にして、あたかもZZZZベストが損害修復業務を行っているかのごとく、数多くの書類を偽造した。この不正行為が拡大するにつれ、本業のカーペットクリーニングよりも、この“保険修復事業”が収益の86%を占めるようになる。しかも、この不正によって、逆に銀行から数百万ドルの融資を受けることに成功したという。

このスキームをもとにして、ミンコウは、ZZZZベストの店舗をカリフォルニア州全土に23店舗展開し、西海岸の3州にも拡大させ、最終的に1400人の従業員を抱えるまでに成長させた。加えてテレビをはじめとするさまざまなメディアに広告を打ち、信頼性を装っていった。