【米国「フロードスター」列伝#10最終回前編】「高校生起業家」不正のピカレスク《前編》:自作自演で最年少上場を果たした「ウォール街の寵児」

自身も本人役で出演、映画にもなった詐欺師

ミンコウは、ACFEの創始者ジョセフ・ウェルズ博士が、同協会が提供する教育コンテンツのために“発掘”したフロードスターとも言える

ウェルズ博士は、当時ミンコウが収監されていたカリフォルニア州の刑務所へ赴き、インタビューした。そのミンコウとのインタビューが収録された自己学習コース「クッキング・ザ・ブックス」(Cooking the Books、注:「帳簿をごまかすこと」「粉飾決算」の意味)は、同協会の1990年代後半のベストセラー教材となり、95年にACFE本部でのキャリアを歩み始めたばかりのギル現会長がミンコウを知ったきっかけにもなったという。

そのミンコウは82年、16歳にしてカリフォルニア州ロサンゼルスの自宅ガレージでカーペットクリーニング会社「ZZZZベスト」を設立し、高校生起業家として全米で名を馳せた人物だ。20歳の時、当時最年少で株式を公開し、ウォール街の寵児となり全米で注目され、87年4月には、アメリカで絶大な影響力を誇っていた大人気トークショー「オプラ・ウィンフリー・ショー」にも出演した

保険修復事業にも手を広げたミンコウであったが、実際は虚偽の財務諸表を作成し、ビジネスの合法性と成功を取り繕っていたのだった。やがて、その綻びが生じ、不正発覚。その後、投獄され改心を公言するも、詐欺の道に戻り、社会の信頼をまたしても裏切った――。

かの「スター・ウォーズ」の俳優マーク・ハミルが父親役として出演した、2018年の映画「コン・マン」(Con Man、注:「詐欺師」の意味)はミンコウの実話をもとにしたものであり、なんと彼自身も本人役で登場する。22年にはディスカバリーチャンネルの動画配信サービス「ディスカバリー・プラス」で「キング・オブ・ザ・コン」(King of the Con、注:「詐欺の王様」の意味)というドキュメンタリーシリーズもリリースされた。他多くのメディアに何度も取り上げられ、言わば“フロードスター代表格”とも言えるミンコウのストーリーを本誌でもご紹介したい。

【発生年】1984~2011年
【罪種】
1988年: 組織犯罪、証券詐欺、横領、マネーロンダリング、郵便詐欺、脱税、銀行詐欺、クレジットカード詐欺
2011年:証券詐欺の共謀
2014年: 銀行詐欺、通信詐欺、郵便詐欺、合衆国への詐欺の共謀
【刑罰】
1988年:懲役25年、執行猶予5年、賠償金2600万ドル(当時のレートで約33億2800万円)
2011年: 懲役5年、賠償金5億8350万ドル(約466億8000万円)
2014年: 懲役5年、賠償金340万ドル(約3億6000万円)

今回もこれまでと同様のアプローチで、ACFE本部が「フロードスターとの会話」(Conversation with a Fraudster)と銘打ったインタビューをもとに、ミンコウのストーリーをお送りする。ACFEは「フロードスター」と呼ばれる有罪判決を受けた不正実行者に、報酬を支払わない方針でインタビューや講演を実施し、カンファレンスやセミナー、ウェビナーなどを介して、不正対策教育プログラムに組み込んでいる。

なお、本記事にある「インタビュー」とは、上記インタビューを指す。そしてこの度も、試みレベルではあるが、1950年代のアメリカの犯罪学者ドナルド・R・クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」にも照らし合わせてみた。