【米国「フロードスター」列伝#4】シティグループで25億円横領した“ジャマイカから来た元少年”

発覚と出頭

2010年、シティグループが彼の不正に気付く約半年前、フォスターはすでに離職し、家族との時間や旅行を楽しむなど、ゆとりある生活を満喫していた。しかし、11年6月、ついに連邦捜査局(FBI)が彼の逮捕に向けて動き出す。

そうとは露知らず、フォスターは旅の途中、パリからタイ・バンコク行の飛行機に搭乗していた。すると、シートベルトを締めて離陸寸前のところ、彼の携帯電話に突然大量のテキストメッセージがあちこちから届いた。

送り主は家族や友人知人、そしてFBI――。当局がついに彼の出頭を求めたのだった。そのままモロッコに逃亡することを提案する友人もいたが、彼はアメリカに残した家族のことを思うと逃亡することはできないと腹を括った。そして、バンコクに到着するとFBIに連絡を入れ、ニューヨークJFK空港で出頭することを告げたのだった。

なぜ彼の不正が発覚したのか。それは、ある致命的なミスによるものだった。「少額の取引は監査の目に止まりにくい」ことを踏まえ、彼は1回の送金額を常に100万ドル以下に抑えることに決め、目立たないよう慎重に横領をはたらいていた。

しかし、ある時そのルールを破り、月末に300万ドルも送金してしまっていたのだ。この送金額はやがてシティグループの監査の目に止まり、内部調査が行われた結果、フォスターの横領が発覚したというわけである。

逮捕後の裁判では、彼の6年にわたる不正行為の詳細が明らかになり、シティグループのシステムを悪用し、2200万ドルという巨額の金額を不正に得ていた証拠があがった。12年6月29日、ついにフォスターは銀行詐欺の罪で有罪判決を受け、懲役8年を言い渡された。

反省、そして現在

服役中、フォスターは自分の過ちと向き合い、過去の行動を振り返った。彼は、自分が周囲の信頼を裏切り、自らの欲望に負けたことを深く反省し、自らの行動は自身だけでなく、家族や友人、同僚にも大きな影響を与えてしまったことを痛感したという。

2019年10月、7年6カ月の服役期間を終え執行猶予で釈放された後、フォスターは再び人生をやり直す決意をした。

過去の過ちを教訓とし二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓い、現在は、監査人、コンプライアンスおよび不正防止の専門家、ビジネスリーダー等に向けて、不正防止・不正対策を支援するトレーニングや講演を行っている。その活動の中で、彼は独自の経験を生かし、アメリカ企業における監査プロセスの脆弱性や不備を指摘しているという。

我々が彼の経験から教訓が得られるとすれば、「成功とは正直さと誠実さに基づくものであり、不正な手段で得たものは決して真の成功にはならない」ということだろうか。